2012 Fiscal Year Research-status Report
クロロフィル蛍光を用いた新規薬剤スクリーニング法の開発
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23657041
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
園池 公毅 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30226716)
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Keywords | シアノバクテリア / クロロフィル蛍光 / 光合成 / 呼吸 / NDH複合体 / 末端酸化酵素 / 阻害剤 / シアン化カリウム |
Research Abstract |
本研究においては、近年急速に整備されている化合物(化学物質)ライブラリから生理活性のある薬剤をスクリーニングする新奇の方法を確立することを目的としている。スクリーニングに用いる生物材料として原核光合成生物であるシアノバクテリアを用い、生理作用をクロロフィル蛍光挙動としてモニターするという植物生理学的な手法を導入すし、「その化合物の多様な機能活性への影響の有無」と「その化合物の標的候補(遺伝子)」という異なる二つの情報を、一回の操作で明らかにする新しい考え方の薬剤スクリーニングシステムの構築を目指している。 平成24年度は、光合成とそれ以外の代謝系の相互作用によるクロロフィル蛍光への影響を把握するために、呼吸の電子伝達に関与するNDH複合体のサブユニットをコードする遺伝子破壊株と、呼吸の末端酸化酵素複合体の阻害剤であるシアン化カリウムを用いて、解析を行なった。そのい結果、呼吸の電子伝達鎖の上流に位置するNDH複合体の機能不全は、その下流のプラストキノンプールの酸化を通して光合成のステート状態に影響を及ぼし、結果としてクロロフィル蛍光挙動に大きな変化が現れることが明らかとなった。さらに、この変化は、呼吸の電子伝達鎖の最下流に位置するNDH複合体をシアン化カリウムで阻害することによって解除される。 また、クロロフィル蛍光の変化に伴い、通常用いられる光合成速度のクロロフィル蛍光による見積もりが不可能になることも明らかとなった。このことは、シアノバクテリアにおける光合成速度の見積もりに大きな問題点を投げかけることになった。 今年度の研究成果により、少なくとも呼吸系に関しては、光合成系との関連のメカニズムが明らかとなり、呼吸系の阻害剤との関わり方についても情報が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スクリーニング方法の確立という意味では、大きな進展はないが、呼吸と光合成の相互作用について大きな発展があり、論文発表にまで至った。
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Strategy for Future Research Activity |
シアノバクテリアにおける光合成と呼吸の相互作用の理解について大きな進展が得られたので、その部分をさらに発展させ、代謝系の相互作用の総合的な理解を目指す研究も推進する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、シアノバクテリアの培養などに利用する消耗品費、および光合成などを測定する機器の物品費に充当する予定としている。
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