2011 Fiscal Year Research-status Report
ツメガエルの未分化細胞群を用いた胚の全体構造を創るアッセイの開発
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23657047
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
黒田 裕樹 静岡大学, 教育学部, 准教授 (70402229)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | BCNEセンター / Nieuwkoopセンター / 初期発生 / アフリカツメガエル |
Research Abstract |
高等動物の胚全体を未分化細胞のみから創出したという報告はない。本研究では、ツメガエルのアニマルキャップ(AC)細胞群だけを用いて、その系の構築を目指した。 胞胚期には2つのシグナルセンターが存在し、両センターによって胚全体の誘導にほぼ十分な状態が導かれるはずである。さらに、本研究室には両センターをAC細胞から分化させる技術もある。それらのAC細胞由来の人工センター領域を組み合わせる胚操作実験を展開し、発生学の一般的手法を用いて胚全体構造の誘導の実現度合いを測定・評価していった。平成23年度は外胚葉領域をBCNE化させるツールの開発に特に集中した。外胚葉領域にCanonical Wntシグナルが働きかけることによって、神経系の組織が誘導される。それ故、Wnt8、LRP6、GSK3、βCateninなどの遺伝子コンポーネントを用いてBCNEセンターを誘導できるか、まず調査した。またBCNEセンターはWntシグナルの標的遺伝子であるホメオボックスタンパク質をコードしたSiamoisとTwinを経て、BMPアンタゴニストであるChordinやNogginの発現を促しているため、これらの遺伝子もBCNE化ツールとして調査した。その結果、直接anti-BMP状態にさせるよりも、早い時期からβCateninシグナルを活性化させる方がBCNE化させる上で効果的であることが判明した。 また、ニューコープセンターの誘導についても調査した。中胚葉誘導分子であるNodalを発現する領域がニューコープセンターにあたる。それ故、VegTの存在が背景にある状態でWntシグナルが活性化させることによって誘導できるかどうか調べたところ、Nodalの大量の発現と高い中胚葉誘導能を確認することができた。 以上のことから初年度の目標としてた、二つのシグナルセンターを人工的に誘導することに成功したと判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は2つのシグナルセンターが効果的に誘導できるか否か、分子生物学的評価法を用いて判断することにあった。その結果、2つのシグナルセンター共に理想的な分子マーカーが十分量発現していることが判明した。以上より、研究は順調に進展していると判断できる。 その上で、次に達成すべき点はこれらの人工的に誘導したシグナルセンターを用いた誘導系の開発にあたる。すでに、いくつかのコンビーネーションを試した結果、非常に低確率であるが、頭部構造から尾部構造までを含む胚様構造の人工的な誘導を確認することができた。しかし、現在のところ、十分な再現性を得られた状態には至っておらず、回数を繰り返すことによって、例数を増やし、その信頼性を確認する必要はある。それは、今年度の課題として当初より設定していたものであり、今後、そのまま発展させていくことになるだろう。 また、研究の過程において、派生的に得られた知見もあった。最終目的の達成には至っていないが、それらを総合的に考えた場合、十分に研究は進んだと判断していいだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、両シグナルセンターの誘導を導くという目標を達成することができた。今後は次に述べるコンビネーション実験を行い、胚の全体構造の形成がどれくらい可能かどうか評価を行っていく。 まず、オーガナイザー等の原腸胚の様子の復元 (胞胚期~原腸胚期)が可能かどうか調べていく。AC細胞群由来の培養片において、原腸胚と同様の現象が起こっていなくては望みが薄い。それ故、オーガナイザーマーカーの発現(Xnot、Xlim、Goosecoidなど)を確認する必要がある。同時に前方内胚葉のマーカーでもあるCerberusやHexの発現も確認し、胚内と同様のオーガナイザーの形成が生じている証拠を得る。 次に脊索(体軸)の形成 (原腸胚期~神経胚期)について調べていく。脊椎動物の初期発生の過程において、最も大きな外観的変化は卵が伸びるという点である。これは背側に存在する細胞群が集まることによって伸張していく現象(Convergent Extension)に依存している。その結果、胚には脊索を中心とした体軸が形成されることになる。それ故、脊索が誘導され、胚が伸張しているかどうか確認することになる。また、Wnt11などのConvergent Extensionに関わる脊索マーカーの発現なども確認していく。 その後、前後軸の状態の確認 (神経胚期~尾芽胚期)、頭部構造(特に眼)の有無(尾芽胚期~幼生期)、そして、運動能力 (尾芽胚期~幼生期)について、更なる調査を進めていくことになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、国際学会への参加することになり、そのための予算を計上している。消耗品については、初年度にかなり揃えることができたので、その分を節約することができると考えている。
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