2014 Fiscal Year Annual Research Report
左右相称花の姿勢を制御する「重力捻性」への形態学的アプローチ
Project/Area Number |
23657048
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
坂口 修一 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (20221997)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 捻れ成長 / 重力応答 / 左右相称花 / 微小管 / コチョウラン / 重力屈性 / resupination / プレッシャーチェンバー |
Outline of Annual Research Achievements |
23年度にランの栽培室を整備し、特定の農家から購入した品質の揃った花芽付きの苗を短期間栽培後、実験に供することにより、重力刺激に対して再現性よく花が回転運動を示す実験体制を整えた。多数の花の動きを間欠撮影動画により解析した結果、花の相称軸を重力方向からずらすと、これを元に戻す方向に直ちに花が回りはじめ、ずれが0度に達すると行き過ぎることなく運動が停止することが観察された。25-26年度の実験で花の回転が誘導される重力方向からのずれの閾値は5度以下ときわめて敏感であったことから、花の角度が常に高精度でモニターされていることが推定された。また、花柄にインクで一列に目印をつけ変位を測定した結果、花柄がほぼ全長にわたって捻れることがわかった。さらに24年度の測定で、花の重心はちょうど花柄の花への接続部位にあることが判明した。つまり花の向きを重力方向からずらしても重量のアンバランスに起因する回転力はほとんど生じないことが想定され、花柄の捻れは、物理的な変形ではなく、重力方向のずれを検知して起こる生物学的反応であることが示唆された。以上の結果を総合すると、重力方向の検知は、花柄の向きや花柄にかかる応力ではなく、花本体の置かれた空間的方向に起因し、したがって重力の検知は花柄でなく花本体でなされ、その刺激が花柄に伝達され、花柄の捻れ反応を引き起こしていることが強く示唆された。花柄の捻れるメカニズムとして表皮細胞の表層微小管の傾きが考えられたが、23-24年度の蛍光抗体法による微小管の観察結果は捻れ方向依存的な微小管の傾きは存在しないことを示した。さらに水ポテンシャル測定用のプレッシャーチェンバーを用いて加圧条件下で微小管阻害剤オリザリンを花柄に浸透させる方法を確立し、26年度にこれを用いて花柄の微小管を破壊したところ花が回転することが確かめられ、花柄の捻れへの微小管の非関与が裏付けられた。
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