2012 Fiscal Year Annual Research Report
「場所取り」現象による細胞接着領域の確保と,その機序解明
Project/Area Number |
23657049
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
幸野 貴之 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10374563)
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Keywords | 細胞接着 / 場所とり |
Research Abstract |
足場依存性を有する多くの接着細胞を単層培養で生育させるためには,細胞を細胞培養容器へと接着させることが必須である。浮遊状態の接着細胞は,細胞接着に必要ないくつかの細胞外マトリックスを放出することが知られている。一方,汎用されるプラスチック製培養容器の素材の多くは,疎水性のポリスチレンであるため,浮遊状態の接着細胞から培養溶液中へと放出される親水性タンパク質の多くは,細胞培養容器に対して高い親和性を持たない。したがって,多くの培養容器は,細胞接着面を化学的に親水処理している。さらに,細胞接着を促進させるため,細胞培養容器表面をポリリジン,ポリエチレンイミン,ポリアリルアミン等の塩基性高分子で被覆するほか,コラーゲンやゼラチン,またはフィブロネクチやラミニンなどの細胞外マトリックスを人為的に塗布する場合が多い。これらが細胞表面に存在する接着因子受容体と相互作用することで,細胞の伸展や増殖,分化など生育に必要な情報が伝達される。本研究では,細胞が基質へと接着する過程よりも前に現れる生理現象に着目した。例えば,単層で増殖する動物細胞を培養容器に播種すると,ほぼ均一に分散し,やがて敷石状,線維状に成長後,接触阻害により細胞の運動や増殖が停止する。この現象は,半世紀以上も前から知られている。この「均一に分散する過程」において,細胞からの未同定化合物の放出を伴う「場所取り」の過程が存在することを初めて見いだした。この「場所取り」という表現は,ある細胞が接着,伸展する領域を確保するため,何らかの因子を放出し,他の細胞を寄せ付けないようにする現象を指すものである。本研究では,上記因子の抽出法の確立を目指し,さらにこの化合物の同定を試みた。
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