2012 Fiscal Year Research-status Report
生体観察のためのホログラフィック4次元顕微鏡の開発
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23657050
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
佐藤 邦弘 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40167432)
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Keywords | デジタルホログラフィ / 3次元顕微鏡 / レンズレス / 無歪高分解能 / 微生物 / 水中観察 / 大深度 / 生体細胞 |
Research Abstract |
本年度研究の第1の目的は、電子ホログラフィによる動く被写体の3次元実時間撮像と3次元実時間表示を実現することである。まず、パルスレーザとワンショットホログラフィを用いた3次元動画像のレンズレス記録再生装置を提案した。提案手法の有効性を検証するため、繰り返し発信可能なパルスレーザ光源とカメラリンクCCD白黒カメラを使って3次元動画像の記録装置を開発した。次に、本記録装置を使って光学実験を行い、室内照明下において回転物体の3次元動画像記録に成功した。これにより、開発したワンショットホログラフィ技術による実時間物体光抽出が有効であることを示した。また、3次元動画像の実時間記録再生のための装置開発を行った。連続記録したホログラムデータをホログラフィック・ディスプレイ装置に転送して3次元像の撮像と再生を行い、室内照明下の回転物体に対して3次元像の実時間記録と再生に成功した。 本年度研究の第2の目的は、高速運動物体の3次元形状や変形、変位を超高速精密に計測可能なホログラフィ技術を開発することである。まず、レンズを使わずに記録したオフアクシスホログラムから空間周波数フィルタリングと空間ヘテロダイン変調を行って複素振幅インラインホログラムを取り出す方法、および波動方程式の解析解を用いて正確な光波面を再生する方法を開発し、光学実験を行って深度の大きい物体の無歪3次元像の記録と再生を実証した。また、光干渉縞の物体表面への投影と合焦点画像の生成、および再生画像への空間周波数フィルタリングの適用によりスペックルの影響を大幅に低減する方法を提案し、超高速で高精度な形状計測法を開発した。実物体を使って形状計測の実験を行い、距離計測の精度として0.01%以下の値を得た。さらに、エッジや不連続な表面を持つ深度の大きい物体に対しても表面形状計測に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、(1)繰返しパルスレーザとイメージセンサを用いて微小被写体の3次元動画像を連続記録する装置を開発し、時系列3次元画像の連続像撮影の可能性を示す、(2)時系列の大開口数ホログラムから無歪高分解能3次元動画像を高速再生する数値計算法を開発する、(3)水中や培養液中の微生物や生体組織の3次元連続撮像および動画像再生の実験を行い、生きたままの状態で4次元(空間+時間)顕微鏡観察が可能であることを示す、ことである。 (1)に関しては、ワンショットホログラフィの技術を使って水中を遊泳中の微生物の記録再生に成功した。この方法により、運動する微生物の4次元観察が可能になる。しかし、発信パワーと発振周期が調整可能なパルスレーザを入手することができなかったために、実時間記録と再生の実証実験は実施できずに終わった。 (2)に関しては、無歪高分解能3次元動画像を高速再生する数値計算法を開発し、計算時間の大幅な短縮を実現できた。ただし、実時間記録と再生を実現するためにはイメージセンサを用いた高速撮像やデータの高速転送、並列計算アルゴリズム、およびGPUを用いた高速計算法の開発が必要になる。これらは、今後の課題である。 (3)に関しては、水中微生物や植物細胞を用いて4次元観察が可能であることを示すことができた。これに加えて、本研究では反射型レンズレスホログラフィック顕微鏡を用いた3次元断層撮像法を提案し、細胞レベル高分解能断層顕微鏡の原理を実証できた。また、反射型レンズレス顕微鏡を用いた3次元断層画像撮像法を提案し、反射型レンズレスホログラフィック顕微鏡を開発して無歪高分解能画像の記録と再生が可能であることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に、高分解能断層画像撮像の提案と生体組織を用いた実証実験を行い、その結果を国際学会において発表する予定であったが、生体組織の高分解能断層画像撮像において新たな課題が生じたため、実験結果を得るのが予定より遅れてしまった。24年度の終わりになってこの課題を解決でき、実験結果が得られるようになった。25年度前半には、水中の培養細胞や生きた生体組織を用いて高分解能断層撮像の実験を行い、断層撮像の原理を実証する。25年度の後半には、得られた実験結果を国内および国外で開催される学会で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度予定額353,523円のうち、国内及び海外において研究成果の発表を行うための旅費として250,000円を計画する。残りの額10,323円は、実験用の物品費として使用する。
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