2012 Fiscal Year Research-status Report
プロトコル・スワッピングによる動物心理の包括的理解
Project/Area Number |
23657055
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江島 亜樹 京都大学, 生命科学系キャリアパス形成ユニット, 助教 (00548571)
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Keywords | 神経科学 |
Research Abstract |
ヒトを含む多くの動物では脳内のモノアミン神経伝達物質が「快」「不快」などの情動を決定している事が知られており、その生理機構は、うつ病などの精神疾患の治療薬ターゲットとしても注目されている。本研究では、体内のモノアミンレベルによってオスの求愛意欲がどのように決定されているのか生理学的解析し、不成功な求愛経験が動物の気分(情動)をどのように変化させ、求愛意欲を減退させているのか、モノアミンをパラメーターとして表現する事を試み、同様に、体内モノアミンレベルが求愛・摂食・睡眠・逃避・攻撃といった様々な行動経験によってどのように影響を受けているのか、複数の行動実験パラダイムのスワッピングを行い、その後の行動パターンの変化から、動物の情動を普遍的に決定する情動センターの存在を行動心理学的に検討する事を目標に行われた。 求愛意欲を制御するモノアミンの決定 オスの求愛意欲は脳内モノアミンのシグナル量減少によってどのように影響を受けるのか、昆虫の主要モノアミンであるドーパミン、セロトニン、オクトパミン生合成に関わる遺伝子、各受容体の遺伝子の突然変異体の行動解析を行ったところ、いくつかの変異体において求愛率の低下が見られる事が確認された。ただし、通常の遺伝子突然変異体では、発生を通じてシグナル量の低下が起こるため、恒常性維持機構による補完を受け行動レベルでは変異の影響が観察されない可能性があるため、次に、各モノアミンの拮抗剤もしくは作動剤をショ糖液に加えて動物に給餌する事により、脳内モノアミン量を一時的に変化させ、求愛意欲への即効的な影響を確認した。さらに、モノアミン量の下がった突然変異体に作動剤を与え、変異体の表現型が回復するかどうか調べる事によってモノアミンの作用が確かなものである事を多重に検定する事に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定通り、一次スクリーニングにより複数の変異体の抽出に成功した。そこで関与が示唆された脳内ものアミンについて、作動剤・阻害剤の一時的導入によっても同様の行動変化が生じる事が確認され、また、変異体の表現型回復にも寄与した事から、得られた 知見は確かなものである事が確認された。 H23年度は当初の予定通り行動スクリーニングを行い、脳内モノアミンであるドーパミンの増減がオスの求愛意欲の増減と相関を持つ事を見いだした。これを元に、H24年度は、ドーパミンがオスのフェロモン感受性を制御している可能性について研究を進めていたが、同年8月、ウィーンのグループにより同様の内容の論文が発表され(Keleman, Nature 2012)、研究計画を変更せざるを得なくなった。また、ほぼ同じ頃、ドーパミンがハエの逃避行動に関与するという報告(Liu, Nature 2012)がなされ、ハエの情動を探るという当研究のスクリーニングの有効性が立証される一方、より精度の高い結果が求められる状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
行動決定に関与が示唆された脳内モノアミンについて、リアルタイムイメージングにより神経の応答を直接的に観察する。また、求愛 行動以外の行動実験も複数導入し、動物の総括的な「情動」の有無とその制御機構について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在、嗅覚系へのモノアミンの直接的関与動態を明らかにするリアルタイムイメージング実験を進めており、助成金未使用分は、生成フェロモン・抗体の購入やデータ解析にあてる予定である。
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