2011 Fiscal Year Research-status Report
概日リズムを指標とした脳神経回路の老化評価システムの構築
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23657056
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
富岡 憲治 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30136163)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 概日時計 / 老化 / ショウジョウバエ / 時計ニューロン / 神経回路 |
Research Abstract |
1.加齢による行動リズム変化:野生型の平均寿命は60日程度であるので、加齢変化を解析するために用いるハエの日齢は、羽化直後、羽化後40日、50日とした。まず、明暗12:12下での活動リズムを、上記各日齢のハエを用いて解析し、リズムの強度、同調位相を検討した。その結果、明暗下で若齢バエは夜明けと日暮れのピークを明瞭に示すが、加齢バエでは両ピークの活動量が減衰し日暮れのピークが不明瞭となること、さらに日暮れのピークが約2時間前進することが分かった。恒暗条件では、若齢のハエは24時間よりもわずかに長い周期で自由継続リズムを示したのに対し、加齢とともに周期が有意に延長するとともに、リズムの強度も有意に低下し、無周期を示す個体数が増加した。2.時計遺伝子の発現リズムに関しては、特に抗PER, 抗TIM抗体を用いた免疫組織化学を行い、タンパクレベルでの解析を進めた。その結果、脳内のいずれの時計細胞においても、加齢に伴い夜間のPER,TIM発現量が有意に減少し、発現リズムの振幅が減弱することが明らかとなった。3.PDF発現ニューロンに着目し、抗PDF抗体を用いた免疫組織化学により、PDF発現ニューロンの形態変化を指標にし、時計ニューロンネットワークの加齢変化を解析した。その結果、PDF発現量が加齢とともに減少し、特に軸索、軸索終末部の発現量が加齢バエでは著しく減少することが分かった。4.PDF発現ニューロンでPDFを強制発現させたところ、1に述べた活動リズムの加齢による変調が部分的に阻害されることが分かった。このことから、PDFの減少が加齢による行動リズムの変調の一因であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画した項目それぞれについて、研究を進展させ、十分な結果を得ている。加齢に伴う行動リズムの明暗下および恒暗条件下での活動リズムの変調を明確に示し、さらに脳内PDFニューロンのPDF発現量が老化に伴い減少することを明らかにした。特に、PDFのPDFニューロンでの強制発現により、行動リズムの加齢による変調がかなりの程度阻害される事実を発見したことは非常に意義深い。また、時計タンパク質発現を指標にした解析から、時計ニューロン内の分子振動が加齢により減衰することを明らかにし、PDFと時計の分子振動機構との関係を研究の一つのターゲットとすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に則して研究を推進する予定である。まず、本年度の継続として、光・温度周期への再同調や光・温度パルスに対する位相変位を指標として光同調性、温度同調性の加齢変化をさらに検討する。また、時計振動機構の転写レベルでの加齢の解析を進める。さらに、PDFの過剰発現個体で時計タンパク質の振動が回復するかどうかを検討し、PDFの加齢との関係をさらに検討する。これらに加えて、新たに、加齢に関わる突然変異系統chico[1], fmr1[Δ50M]を用いて、行動リズムの加齢変化の解析とPDF発現の加齢変化の解析を行い、結果に応じてmRNAやタンパクレベルで時計振動機構の加齢変化についても解析を行う。chico[1]は寿命が約60%延長し、逆に fmr1[Δ50M] は約40%短縮する。これらの寿命の変化が時計機構の老化に反映されるかどうかを検討することで、時計機構の加齢が老化の指標となりうるかどうかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究計画に則して、ハエの飼育・維持、および免疫組織化学やmRNA測定などの分子生物学的解析に必要な消耗品類の購入、学会発表のための旅費に使用する計画である。
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Research Products
(6 results)