2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23657060
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
志賀 向子 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90254383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 慎介 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70347483)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生物時計 / コウチュウ / 概日リズム / 標識再捕法 |
Research Abstract |
オオクロコガネ成虫の活動には二日周期のリズムがみられる。本研究はこのユニークな行動に注目して概日時計の関与という観点からこのリズムの至近要因を明らかにし、野外観察から究極要因を探る糸口を探すことを目的とする。本年度は、大阪府大和川河川敷(34°35′N、 135°30′E)に生息するオオクロコガネを対象に以下の結果を得た。1)活動リズムの測定:フェロモントラップによりオスを採集し、25℃一定の下12h明期12h暗期の明暗条件、恒暗条件下で活動を記録した。その結果、各個体は明暗サイクルのもとでは二日に一度の暗期に地上へ出現し、恒暗条件でその周期性は約47.6 ± 0.3時間の周期(n=6)で自由継続した。このことより、オオクロコガネは内因性の48時間リズムをもつことが明らかになった。2)野外発生消長と出現周期:アキニレ(Ulmus parvifolia)に集まる集団を対象に標識再補法を行い、発生消長と出現周期を調査した。成虫はオスメスともに6月初旬から9月中旬まで出現し、6月下旬から7月にかけて個体数が増加した。6月3日より全224個体の前鞘翅に個体識別を行い標識した。その結果、6月3日から数えて奇数日に出現する集団と偶数日に出現する集団に分かれた。また、標識日から2日の倍数で繰り返し捕獲される個体が観察された。このことから、野外個体においても48時間の周期で活動する可能性が示された。3)野外出現時間帯:出現期間中8日ごと、フェロモントラップによる捕獲とアキニレ樹状の個体観察を1時間ごとに行い、成虫の出現時間帯を調べた。その結果、オスメスともに日暮れとともに出現し、夜明けまでアキニレ樹上で葉を食べていることがわかった。交尾は日暮れ後間もない時間帯に観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
活動リズムの測定と野外発生消長、出現周期、出現時間帯については解析が進んだ。一定の光周期と温度条件下で活動を記録する方法を確立し、成虫の活動リズムが内因性であることを示すことができた。また、標識再捕法により、野外においても地上への出現が二日おきに見られることを示すことができた。しかしながら、1年目に計画していた継代飼育の確立と、時計遺伝子のクローニングに至らなかった。成虫個体の出現期間中は、行動実験と野外観察にかかりきりとなり、これら継代飼育や分子生物学実験用の個体を別フィールドで探すことができなかったことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の大和川河川敷のフィールドでは引き続きオオクロコガネ成虫個体の出現や交尾の調査を行う予定である。このフィールドはそのまま野外調査用とし、実験室内の実験や飼育用に他の生息地を探し、個体を採集する必要がある。そのために次年度からは新たに研究協力者1名を導入する。これにより、継代飼育の確立と至近要因を探るための生理学実験を推進する。1年目に計画していた時計遺伝子のクローニングができていないため、これを2年目に行う。また、大和川河川敷の他で多くの採集個体が得られた場合は3年目に計画していた位相反応曲線の作製を2年目に行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大半を計画に沿って必要な試薬、飼育容器などの物品費に用い、採集、野外調査、国内の学会発表のための交通費に用いる。また、7月の野外調査において、調査対象の木を増やすため、人件費が必要となる。このため謝金を用いる予定である。
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Research Products
(2 results)