2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23657060
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
志賀 向子 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90254383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 慎介 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70347483)
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Keywords | 生物時計 / 概日リズム / 標識再捕法 / 位相反応曲線 / コウチュウ |
Research Abstract |
オオクロコガネ成虫の活動には二日周期のリズムがみられる。このユニークな行動に注目して概日時計の関与という観点からこのリズムの至近要因を明らかにし、野外観察から究極要因を探る糸口を探すことを目的とする。本年度は、1)二日周期のリズムを駆動する時計の周期を調べるために、大阪府淀川河川敷に生息するオオクロコガネ成虫を用いて光パルスに対する位相反応を調べるとともに概日時計遺伝子のクローニングを行い、2)大阪府大和川河川敷の成虫を用いて昨年度に引き続き標識再捕を用いて野外での行動範囲及び出現頻度調査を行い以下の結果を得た。 1)地中滞在時にも光が届くように、土の代わりに光をよく通すスポンジ片を用いて位相変位の有無を調べた。オオクロコガネの活動期の前半に光パルスを1回与えると、位相が少し後退し、活動期の後半に光パルスを2回与えると、位相は前進した。概日時計遺伝子clockの部分配列を決定した。2)大和川河川敷に自生する2本のアキニレ(標識木)樹上に集まるオオクロコガネ成虫に毎日日没直後に標識を行った。標識木を含む計10本の木を対象とし、成虫の行動範囲を連続2日間調査した。その結果、標識木以外で捕獲された95頭のうち、標識個体は2頭であった。また、日の出時刻にアキニレの木から飛び去る成虫を7頭追跡したところいずれも15 m以内の土に潜った。これらのことからオオクロコガネの移動性は低いと考えられる。さらに、標識木における成虫の再捕数を日没直後に2012年6月4日から9月19日まで毎日調査した。その結果、 3回以上出現した個体は102頭あり、そのうち約70%が標識されてから偶数日に出現した。また、少数ではあるいが、二日おきに出現する個体が観察された。以上より、成虫は同じ木やその近辺に繰り返し出現し、大和川河川敷においてオオクロコガネ個体が規則正しい二日の周期性を持って出現すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
至近要因については、本年度は淀川河川敷に野外個体を見つけることができたため、予定通り位相反応曲線の実験を開始し、位相反応を観察する方法を確立することができた。また、概日時計遺伝子の一つの部分クローニングに成功した。野外観察については、大和川河川敷の昨年度と同じフィールドで標識再捕を2年にわたり実行し、野外での発生消長と地上への出現頻度を出現期間中毎日記録することができた。ただし、継代飼育に成功しておらず、今後の課題として残される。
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Strategy for Future Research Activity |
学外のオオクロコガネ飼育経験者に相談し継代飼育を成功させることにより、室内での実験個体数を増やす。野外採集個体および実験室飼育個体を用いて、概日時計遺伝子ノックダウンの概倍日(約二日)リズムに対する影響を調べるとともに位相反応曲線を得る。 また、究極要因を探る糸口を探すため、本年度は生殖活動に注目する。本種が48時間周期の時計を持っていることは考えにくく、本種は概日時計を持ちながら1日毎に地上への出現を抑制しているのではないか.そして,抑制によって節約されたエネルギーが生殖活動に利用されているのではないかと考えた.本種の生殖腺の発達や生殖行動が,地上への出現に概日リズムが見られる近縁種と比べて短期間で起こるという可能性を検証する。具体的には、1. 野外での摂食,生殖行動の観察、2. 実験室における地中の行動観察、3. 準自然条件下での生殖行動の観察を行うとともに、4.性フェロモン,精液産生速度を調べ、概日リズムを持つと考えられる同属のマルオクロコガネ、クロコガネ、コクロコガネの観察も行い、オオクロコガネの結果と比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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