2011 Fiscal Year Research-status Report
ポリユビキチン鎖の連結特異的な検出法の構築と病理組織への応用
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23657075
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
徳永 文稔 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (00212069)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | タンパク質 / 酵素 / 細胞・組織 / ユビキチン / 炎症 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
我々は、直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼ複合体LUBACを見いだし、LUBACが生理的には古典的NF-κBシグナル制御を司ることを報告した。さらに本年度の研究で我々は、HOIL-1LとHOIPという2つに加えて、LUBACの新規サブユニットとしてSHARPINを同定し、SHARPIN欠損マウスは重篤な慢性皮膚炎を発症するが、この原因がLUBAC複合体の減少に伴うNF-κB活性化の低下に起因することを明らかにした(Nature, 2011)。また、癌細胞におけるLUBACの役割を解析し、LUBACは骨肉腫細胞の肺転移に関わることを報告した(Int. J.Oncl., 2012)。加えて、LUBACの構成サブユニットの構造解析にも着手した(Biomol. NMR Assign., in press, EMBO Rep., in press)。萌芽研究で目的とした新たな直鎖状ユビキチン結合センサーとして我々は、A20という脱ユビキチン化酵素のC末端に存在するzinc finger7(ZF7)を同定した。A20 ZF7は直鎖状ユビキチンに特異的に結合することを生化学解析に加え、結晶解析により明らかにした(投稿中)。A20-ZF7をタンデムに3個連結すると直鎖状ユビキチンへの親和性が増大し、これをdoxycyclineで誘導する細胞では、TNF-α処理によってNF-κBシグナルは抑制されるがMAPキナーゼの活性化は影響を受けないことを見いだした。この結果は、ZF7のタンデム結合体が細胞内で直鎖状ポリユビキチン鎖と相互作用するセンサーとして機能し、NF-κB経路の活性化を特異的に抑制していることを示唆してる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
全く新しいユビキチン鎖特異的なセンサープローブの開発に成功し、NF-κB制御に利用可能であることを示すことができ、細胞レベルでも使用可能であることが明らかになった。当初計画より早く、この部分に関して既に論文として投稿中であり、良好に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、下記の計画にて研究を推進する(1) ユビキチン鎖プローブの高感度化:平成23年度の研究によって得られたポリユビキチン鎖プローブのリピート数を最適化するとともに反応系の高感度化を行い、細胞や標本レベルが測定可能な測定系を確立する。(2) 細胞内のポリユビキチン鎖生成のイメージング解析:GFPと融合したユビキチンセンサープローブを用いて、細胞をTNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカインで処理した場合における直鎖ポリユビキチン鎖生成をイメージング解析する。(3) 病理組織におけるポリユビキチン鎖生成の解析:NF-κB活性化は慢性炎症、癌などの病態に深く関連する。そこで、病態における直鎖やLys63ポリユビキチン鎖生成の寄与を明らかにするため、病理組織における直鎖状やLys63ポリユビキチン鎖生成の検出のために開発した手法を応用する。我々はB型肝炎とLUBACとの連関を既に見いだしており、肝炎の癌部と非癌部におけるポリユビキチン鎖生成を解析することで、慢性炎症における役割を明らかにする。また、慢性皮膚炎やリウマチ組織についても解析を行う。(4)直鎖、Lys63ポリユビキチン鎖形成の阻害剤スクリーニングへの基礎検討:直鎖やLys63ポリユビキチン鎖形成を阻害することでNF-κB活性化を阻止する物質はリウマチなどに対する有効な治療薬となる可能性がある。そこで、FRET法を応用して阻害剤スクリーニングの基礎検討に着手する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分配予定額1300千円のうち、700千円分を物品費として一般試薬、プラスティック類、細胞培養用試薬などの購入に充てる。学会出張など国内旅費に300千円、人件費謝金に150千円、その他(印刷費など)に150千円を予定している。
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