2011 Fiscal Year Research-status Report
ノシセプチン疼痛受容体スーパーアゴニストおよびスーパーアンタゴニストの創製
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23657078
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
下東 康幸 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00211293)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 分子認識 / 蛋白質 / 生理活性 / 脳・神経 / 鎮痛・疼痛 |
Research Abstract |
本研究の目的は、痛み増強(疼痛)に働くノシセプチン受容体ORL1について、ORL1受容体を丸ごと総アラニンスキャンし、受容体活性化に必須な残基を同定し、これを捕捉して活性増強するスーパーアゴニスト、あるいは抑制するスーパーアンタゴニストを得る一般的な分子設計法を確立することである。丸ごと総アラニンスキャンにより、我々がこれまで見出したスーパーアゴニスト、すなわち、結合親和性から期待されるよりずっと強い活性を示すリガンドや、阻害活性が非常に強くアゴニスト活性ゼロの純アンタゴニストの活性発現機構を解明し、新規分子の設計・合成を目指す。 本年度は、ノシセプチン受容体ORL1の丸ごと総アラニンスキャンのためのアミノ酸変異体作製を精力的に実施し、計画通りに7本存在する膜貫通部分すべて、また、第8ヘリックスを含め全てのα-ヘリックスのアミノ酸約160残基について、1つ1つ、アラニンに変異させた。また、細胞内外ループの変異体作製に取りかかり、約40残基について終了し、受容体全体で見ると約65%の残基について変異体作製を終了した。さらに、作製変異体について結合試験および活性化試験を実施し、活性な受容体構造の構築に5つの構造要因が働いていることが明らかとなった。これにより、アゴニスト・ノシセプチン、純アンタゴニスト・isovaleroyl-RYYRIK-NH2の結合サイトがほぼ明らかとなった。また、受容体活性化のみに関わる一連のアミノ酸残基群を同定できた。 さらに、純アンタゴニストのトリチウム標識体の設計・合成に成功した。これにより、受容体結合を直接に評価する結合試験系の確立に成就した。また、ORL1の薬理学的分子シャペロンとして働く有機小分子のアンタゴニストの探索に成功した。これにより、受容体構造に最安定に結合するアンタゴニストの分子設計のもう一つの端緒が開かれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通り、ノシセプチン受容体の丸ごと総アラニンスキャン変異体作製が進んだ。さらに、純アンタゴニストを用いた試験系の確立に成就するなど、問題なく計画はに順調に進展している。これらに加えて、ORL1の薬理学的分子シャペロンを発見するなど、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では、変異体をまだ作製していない部位について、N端ヘッド、C端テールの順に置換し、全体の完成をめざす。こうして得られるノシセプチン受容体の丸ごと総アラニンスキャン変異体シリーズは、これまで類を見ない規模であり、ORL1受容体について本質的な機能構造に必須な構造要因が解析されると期待される。一方、2012年になって、ORL1受容体に最も類似したκオピオイド受容体のX線結晶構造解析が報告され、これを鋳型としたホモロジーモデリングからORL1受容体の立体構造を再構築する。この構造上で総アラニンスキャンの結果を再評価し、構造活性相関を再度、検討・評定する。さらに、この立体構造を考慮したうえで、結合試験と活性化試験の結果により、活性増強するアゴニスト、あるいは抑制するアンタゴニストを得る一般的な分子設計を実施し、化学合成、活性評価のスキームで鋭意な研究展開をはかる。そして、高活性なスーパーアゴニスト、スーパーアンタゴニストを得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では受容体結合試験を継続的に、しかも、量的に実施し、そのための消耗品が大量に必要である。特に、高額なトリチウム標識したペプチド性標準リガンド、35-S標識のGTPγS 、フィルター付き96穴プレートなどの専用の使い捨てプラスチック製品およびガラス製品が必要となる。同様に、遺伝子操作、細胞培養、タンパク質の発現・精製のためにも、 消耗品が必要である。このように、研究経費の大部は消耗品の購入に使用する。 得られた成果については、国内の学会(日本生化学会、ペプチド討論会等)で発表するが、参加のために旅費を充当する。
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Research Products
(18 results)