2011 Fiscal Year Research-status Report
プロテインキナーゼNrkを介した胎盤による分娩誘発の分子機構
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23657086
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
傳田 公紀 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (50212064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
駒田 雅之 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (10225568)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Ser/Thrキナーゼ / ノックアウトマウス / 胎盤 / 分娩 / X染色体不活化 |
Research Abstract |
応募者はX染色体にコードされる新規プロテインキナーゼNrk(Nik-related kinase)のノックアウトマウスの解析を行い,胎児におけるNrk欠損によって胎盤の過形成が生じることならびにその母体に分娩不全を引き起こすことを見出した(Denda et al.)。これは胎児から母体に向けて何らかの分娩誘発シグナルが発信されること,その際にNrkがこのシグナルの発信に不可欠な役割を担っていることを意味し,さらにNrk欠損により胎児と母体を結ぶ胎盤に形態異常が見られたことから,このシグナルが胎盤から出されていることが示唆されるものである。本研究では胎児(胎盤)による分娩誘発の分子機構を知る有力な手掛かりを得るため,まずNrkと相互作用するタンパク質の同定を行った。これまでタンパク質分子間相互作用によって細胞増殖制御に関わることが報告されているシグナル伝達分子を含め複数の候補分子が得られてきており,現在これら結合因子であるタンパク因子に関し哺乳動物細胞内でNrkと結合するか,Nrkによってリン酸化されるか否かの解析を進め,Nrkの生理的役割を明らかにしようとしている。また,Nrkの遺伝子ノックアウトによって遺伝子産物量が変動するタンパク質の探索を行い,これまでのところ胎盤全組織由来のリン酸化基質の可能性が期待される十数個の検出スポットを取得した。これら検体の質量分析を行い発現タンパク質を解析し,Nrkと相互作用する細胞内分子の同定を開始したところである。分娩は妊娠維持ホルモンであるプロゲステロン(P4)の母体血中レベルの低下により誘発される。そこでNrkによる分娩誘発とP4との関連性を調べた。これまでのところ,マウス妊娠後期におけるWTとKOに有意な差は認められなかった。従って,Nrkが齎すと考えられる分娩誘発メカニズムに,直接既知のP4制御が関与していないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では胎児胎盤による分娩誘発の分子機構を知る有力な手掛かりを得るため,Nrkと相互作用するタンパク因子のスクリーニングを進めてきた。その結果,酵母ツーハイブリッド法により取得した複数の候補分子は,細胞周期を介する細胞増殖調節因子であることが報告されているものや直接タンパク合成に与る分子等が含まれていた。他方,タンパク質分子間相互作用の別法としてGST-プルダウン法も並行して実施した結果,シグナル伝達に関与する複数の候補分子が得られている。現在これらNrkと相互作用するタンパク質分子に関し哺乳動物細胞内でNrkと結合するか,Nrkによってリン酸化されるか否かを知るためまず免疫沈降法による解析を進めている。さらにNrkがリン酸化する基質タンパク質についても胎盤の全組織に対して行い,リン酸化基質の可能性が期待される十数個の検出スポットを取得した。これら検体の質量分析を行うことで発現タンパク質を解析し,Nrkと相互作用する細胞内分子の同定を進めており,本研究の進展によりNrkと結合するタンパク因子によって未知の細胞内シグナル伝達機構が明らかにされることが期待できるものと考えられる。第二にNrk欠損の胎児(胎盤)をもつ妊娠マウスにおいて,P4に関連する母体由来の既知の分娩誘発機構に異常が認められるか否かを明らかにするため,分娩間際まで経時的にP4の血中濃度を解析したところ,Nrkの関与する分娩誘発に至る現象が既知のものと独立したメカニズムであると考えられる結果が得られた。従って胎盤においてNrkによるシグナル伝達の下流で誘導される標的遺伝子の同定に力点を置き,分娩の誘発に至るNrkのシグナル伝達経路を解明していくことが重要であるという方針を導き出すことができた。以上の進捗状況から,今後若干の方針の修正を要しながらも現在までのところ研究計画は概ね予定に沿って漸進していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き有胎盤哺乳類における妊娠末期の分娩誘発メカニズムの解明を目的として,今後の研究計画を遂行する。まず,Nrk欠損胎児を妊娠した母体マウスにおける既知の分娩誘発因子を検索する。分娩間際の子宮筋収縮を促進するシクロオキシゲナーゼ・オキシトシン受容体や子宮頸管の熟化に関与するmatrix metalloproteinase(MMP),ヒアルロン酸合成酵素(hyaluronan synthase;HAS)等の諸因子についてそれぞれ遺伝子発現レベルでの動態を解析する。またNrkのリン酸化基質の探索に関し,今後はNrkがWTにおいて高発現しNrk欠損で過増殖に至る海綿状栄養膜細胞層を胎盤組織より取り出してプロテオーム解析を行う。分画された二次元電気泳動像より選択された候補タンパク質を質量分析により同定し,更なる機能解析を行う。他方,酵母ツーハイブリッド・スクリーニングならびにGSTプルダウンで同定されたNrk結合タンパク質に関し,胎盤組織並びに哺乳動物培養細胞を用いて生化学的・細胞生物学的な機能解析を行う。Nrkと個々の結合因子が実際に分子内のどの領域でin vivoで相互作用しているのか免疫沈降法により調べ,Nrkの相互作用が細胞生理にどのような影響を与えるのか解析する。妊娠母体由来の既知の分娩誘発機構にNrk欠損胎児を妊娠してもP4に関し異常が認められない結果が得られていることから,今後は胎盤においてNrkによるシグナル伝達の下流で誘導される標的遺伝子の同定に注力する方針である。さらに,胎盤でNrkによるシグナル伝達の下流で発現誘導される遺伝子のマイクロアレイ解析をおこなう。Nrk欠損胎盤ではNrkの標的遺伝子の発現が低下していると予想されることから,DNAマイクロアレイ法による遺伝子発現プロファイルの解析を行いNrk欠損胎盤を正常胎盤と比較し発現の低下した遺伝子を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,試薬類等多くの消耗品を必要とするため,次年度も主な経費として消耗品を申請している。具体的な内訳は以下の通りである。第一に,薬品類として分子生物学実験用試薬(オリゴヌクレオチド<受託合成>・DNAポリメラーゼ・RNA精製キット・DNAシーケンシングキット等),生化学実験用試薬(汎用試薬・分子量マーカー・ELISAキット・抗体・イムノブロット検出キット・液体培地ならびに各種培地成分・ウシ胎児血清等)[800千円程度]。第二に,実験器具としてピペットマン用チップ,遠沈チューブ,細胞培養用ディッシュ,ピペット,フラスコなど[200千円程度]。また,本研究を遂行する上でで不可欠な遺伝子改変マウスの飼育と繁殖を行うため,動物飼育施設の管理費(年度あたり200千円)を申請している。さらに,研究成果の発表と研究発展に貢献しうるディスカッションを行う機会を得るため国内学会での成果発表(年度あたり2回程度)を予定しており,旅費を申請した。なお,設備備品費に関し,概ね現有設備で研究可能であるが,実験に不可欠な分光光度計や微量冷却遠心機が老朽化し故障が相次いでいる現状があり,研究推進上の効率を図るため,いずれかの修理保守費用を経費に充てることが必要になる可能性がある。
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[Journal Article] Nrk, an X-linked Protein Kinase in the Germinal Center Kinase Family, Is Required for Placental Development and Fetoplacental Induction of Labor2011
Author(s)
Denda, K., Nakao-Wakabayash,i K., Okamoto, N., Kitamura, N., Ryu, J.Y,, Tagawa, Y., Ichisaka, T., Yamanaka, S., Komada, M.
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Journal Title
The Journal of Biological Chemistry
Volume: 286
Pages: 28802-28810
DOI
Peer Reviewed