2011 Fiscal Year Research-status Report
記憶中枢の海馬で♀と♂の性差を分子論的に明らかにする
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23657098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川戸 佳 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50169736)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 海馬 / 雌雄差 / 記憶 |
Research Abstract |
(A) 質量分析を繰り返し行い、「♀海馬内でのエストラジオール(E2)は、血中の生理周期による変動にほぼ比例する形で変動する」ことを見出した。海馬と血中でE2変動の位相にずれはないようであった。共にProestrus (Pro) で最高値を示した。但し、海馬中のE2は血中のE2より濃度が30倍も高かったので、血中から海馬にE2が流入しているのではなく、海馬自身の合成だと言い切れる。 (B) 海馬ではPROGと E1という女性ホルモンも変動を示した。海馬PROGは血中PROGの2倍の濃度であり、共にDiestrus-1 (D1)で最高値を示した。 (C)海馬内の女性ホルモン合成酵素 (P450(17α),17β-HSD, P450arom) のmRNAを生理周期で解析したところ、驚くべきことに全く変動がみられなかった。 従って、PROGの生理周期変動によってPROG→ADinone→ E1→E2という変換によって、E2の生理周期変動が発生したのではないか、と考えられる。ただPROG, E2 の最高値の日はずれているので、変換中に位相がずれている。ADinone→ E1の時にPro以外の濃度が低下し、大きく位相がずれている。 (D) 女性ホルモン受容体[ERα, ERβ, PR]のmRNA発現量は生理周期で変動が全く無かった。これも予想外であった。 (E) ♀海馬のテストステロンTは生理周期でほぼ全く変動しなかったので。従って、性ホルモン関連でも、全てが大きく変動するわけはなかった。♀海馬の記憶機能が、生理周期で大きく変化することはないということが、これまでの神経行動学の報告で出ている(モリス水迷路などの成績は♀の生理周期で変動すると言う報告と、変動しないと言う報告が両方ある)。この空間学習能が男性ホルモンTに支配されているとすると、変化しなくてもよいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の計画に書いた(A),(B),(C),(D),(E) が、ことごとく達成されているから。
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Strategy for Future Research Activity |
(F) ♀で卵巣を摘出して、血中からのPROG, E1,E2,Tの寄与をなくした場合、海馬のPROG, E1,E2,T濃度はどうなるか? 合成酵素 [P450(17α),17β-HSD, 3β-HSD, P450arom]のmRNAの発現に影響は及ぶのか?という問題を追及する。 (G) ♂海馬(既に多くのデータ蓄積あり)と、♀とを比較する(Hojo et al.,2009 Endocrinology; Kimoto et al., 2010 Endocrinology)。♂は♀(予備測定)よりも海馬内E2濃度が8倍程度高いので、これから性差が引き起こされるはずだと考えられる。スパイン密度や頭部に差が出るのか出ないのか?も解析する 神経シナプスの長期増強(電気生理)の差(♂>♀)がE2濃度の差(♂>♀)だけで説明できるのかどうかも考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品と人件費にあてる
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[Journal Article] Hippocampal synthesis of sex steroids and corticosteroids: essential for modulation of synaptic plasticity.2011
Author(s)
Hojo Y, Higo S, Kawato S, Hatanaka Y, Ooishi Y, Murakami G, Ishii H, Komatsuzaki Y, Ogiue-Ikeda M, Mukai H, Kimoto T
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Journal Title
Front Neuroendocrine Science
Volume: 2
Pages: Article 43
Peer Reviewed
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[Journal Article] Endogenous Synthesis of Corticosteroids in the Hippocampus.2011
Author(s)
Higo S, Hojo Y, Ishii H, Komatsuzaki Y, Ooishi Y, Murakami G, Mukai H, Yamazaki T, Nakahara D, Anna B, Kimoto T, Kawato S
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: 6
Pages: e21631
Peer Reviewed
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