2011 Fiscal Year Research-status Report
光合成蛋白質と金属ナノ粒子を用いた人工光エネルギー水分解システムの開発
Project/Area Number |
23657099
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野口 巧 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60241246)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 人工光合成 / 光合成 / 水分解 / 酸素発生 / 金ナノ粒子 / ナノデバイス / 新エネルギー |
Research Abstract |
CP47サブユニットのC末端にヒスチジンタグを導入した好熱性シアノバクテリアThermosynchococcus elongatus の光化学系II蛋白質を、Ni-NTA (nickel-nitrilotriacetic acid)を介して直径20 nmの金ナノ粒子へ結合させることにより、金ナノ粒子―光化学系II複合体を初めて作成した。電子吸収スペクトルにより、金ナノ粒子のプラズモン吸収(530 nm)に加え、光化学系IIのクロロフィル由来のQyバンド(674 nm)およびSoretバンド(440 nm)の存在が確認できた。プラズモン吸収とQyバンドとの吸光度の比から、金ナノ粒子あたり4―5つの光化学系II二量体が結合したことが示された。金ナノ粒子への複数個の光化学系II蛋白質の結合は、さらに透過型電子顕微鏡観察によって確認した。生成した金ナノ粒子―光化学系II複合体はNiアフィニティーカラムにほとんど結合しなかったことから、光化学系IIはヒスチジンタグを介して金ナノ粒子に結合していると結論した。このことは、光化学系II蛋白質が電子受容体側を金ナノ粒子側に向けて配向した状態で結合していることを意味している。光化学系II―金ナノ粒子複合体の光照射による酸素発生活性を、酸素電極を用いて評価した結果、低塩濃度下における遊離光化学系II蛋白質試料とほぼ同じ酸素発生活性を持つことが示された。これらの結果から、本研究で得られた光化学系II-金ナノ粒子複合体は、水から電子を得る光エネルギー変換ナノデバイスとして応用が可能であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目的としていた、光化学系II蛋白質と金ナノ粒子の複合体の作成に世界で初めて成功し、その結果をアメリカ化学会が発行する速報誌J. Phys. Chem. Lett.に報告した。光化学系II蛋白質はHisタグとNi-NTAを介して特異的に金ナノ粒子に結合していることが示され、また、光エネルギーを用いた水分解による酸素発生も確認でき、光エネルギー変換ナノデバイスとして機能することを示すことができた。これらのことから、初年度の当初の目的はおおむね達成できたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに作成した金ナノ粒子―光化学系II複合体は、低塩濃度下における遊離光化学系II蛋白質試料とほぼ同じ酸素発生活性を持っていたが、酸素発生を最大にするmMオーダーCaCl2を含む溶液中での活性に対しては約30%と低いものであった。そこで、金ナノ粒子を凝集させずに、酸素発生活性を上げる条件の最適化を行うことを計画している。また、赤外分光法を用いて金ナノ粒子―光化学系II複合体中の電子移動反応を調べ、水分解系から金ナノ粒子への電子移動を確認する。さらに、金ナノ粒子―光化学系II複合体に光化学系Iを結合させ、光化学系I―金ナノ粒子―光化学系II複合体を形成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も金ナノ粒子や、C2-NTA、蛋白質調製用の試薬などの消耗品を中心に研究費を使用する。また、学会での成果報告および共同研究者との研究打ち合わせなどの旅費に使用する計画である。
|