2012 Fiscal Year Research-status Report
光合成蛋白質と金属ナノ粒子を用いた人工光エネルギー水分解システムの開発
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23657099
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野口 巧 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60241246)
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Keywords | 光合成 / 水分解 / 酸素発生 / 人工光合成 / 金属ナノ粒子 |
Research Abstract |
1.前年度までに我々が開発した好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus elongatus由来の光化学系II蛋白質(PSII)と金ナノ粒子(GNP)を結合した光水分解ナノデバイスの水分解活性を向上させるため、調製プロトコルの改善を行った。低Ca2+濃度緩衝液中(金ナノ粒子の凝集を避ける)でのPSIIのインキュベーションによる水分解能の低下を回避するため、GNPとPSIIの結合のためのインキュベーション時間を極力短縮し、PSII結合後に迅速に十分なCa2+濃度の緩衝液に移した。その結果、遊離光化学系II蛋白質に比べて23%であった酸素発生活性を46%にまで向上させることができた。 2.光化学系I蛋白質(PSI)の電子供与体側をGNPに結合させるため、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803を用い、PSIのPsaLサブユニットのC末端側(ルーメン側)にヒスチジンタグを導入した変異体を作成した。このシアノバクテリア細胞から単離精製したHis-PSIを、Ni-NTAを介してGNPに結合させた。また、His-PSIIとHis-PSIを同時にGNPに作用させ、PSIIとPSIを配向を制御しながら(PSIIは電子受容体側、PSIは電子供与体側に)GNPに結合させ、それらの双方を持つPSII-GNP-PSI複合体を作成した。PSIとPSIIの両方がGNPに結合していることを、77 Kにおける蛍光スペクトル測定によって確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする高効率な水分解ナノデバイスの開発に必要な、PSII-GNP複合体の水分解・酸素発生活性を向上させることができた。また、さらに光化学系Iを結合したPSI-GNP-PSII複合体を作成できたことは、水分解により水素発生を行うナノデバイスの開発に大きく近づいたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.PSII-GNP複合体の水分解・酸素発生活性をさらに向上するよう、調製プロトコルを改善していく。 2.PSI-GNP-PSII複合体中で電子がPSIIからPSIへ移動するかを、様々な分光法を用いて調べる。電子移動速度が不十分である場合には、適当な酸化還元メディエータを添加するなどの工夫をする。 3.PSIに白金ナノ粒子を結合させ、人工電子供与体の存在下で水素発生することを確かめた後、PSII-GNPにPSI-Ptを結合させ、水分解によって水素を発生する光水分解ナノデバイスを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的に消耗品の購入に使用する。内訳としてはシアノバクテリアの培養、PSI, PSII蛋白質の調製などに必要な一般試薬と消耗品、金ナノ粒子、白金化合物、C2-NTAなど、PSI-GNP-PSII複合体の調製に必要な試薬を購入する。 また、研究費の一部は、成果報告、情報収集のための旅費として使用する。
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Research Products
(31 results)