2011 Fiscal Year Research-status Report
蛋白質の分子動力学計算のための高次構造に依存する新規力場関数の開発と検証
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23657103
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 春木 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (80134485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷹野 優 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (30403017)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 生物物理 / 分子シミュレーション / 構造エネルギー / 構造予測 |
Research Abstract |
R. F. W. BaderによるAIM (Atoms in Molecules)法により、水素結合エネルギーを、量子化学計算によって高い精度で算出した系の電子密度の分布から推定した。高精度な基底・計算法(DFT-M062X/6-31+G*//DFT-M062X/6-31+G*レベル)によって、理想的な構造を持つペプチド結合が4つから16のモデルまでのα-へリックスに対してその電子状態を計算し、個々に主鎖水素結合に対応するρ(rc)を算出した。その結果、ペプチド結合が伸長されるほどこのρ(rc)大きくなり、また、長さが異なるα-ヘリックスであっても、そのC末端にある水素結合のρ(rc)はほぼ同様の小さい値を持っていた。以上から、α-ヘリックス中の同種類の原子間の水素結合であっても、周囲の環境によってその水素結合の強さが変化することが示唆された。一方、2~7残基のAlaによるβストランドを2本、並行および反並行に配置して理想的な並行および反並行β構造とし、同様のAIM法計算を実施した。その結果、並行β構造では残基数が増えて水素結合数が増えると、単純に水素結合エネルギーが比例して減少する結果となった。しかし、反並行β構造では、水素結合3本→4本および5本→6本では急激にエネルギーが減少し、水素結合ドナーとアクセプターによる単純な2体相互作用のみでは表せないことが判明した。さらに、Protein G(PDB ID:2GB1)のα-ヘリックス部分(残基22-36)をモデル化し、電子状態計算およびNatural bond orbital解析をB3LYPと 6-31G(d)を用いて行った。その結果、ペプチドN-H基のσ*軌道への電子移動に伴う安定化のエネルギー:E(2)は、水素結合距離と指数的に強い相関があり、また、α-ヘリックスが長くなるにつれてE(2)が大きくなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り研究は推移しており、α-へリックス、β構造とも、二次構造の場所に応じて、水素結合エネルギーの値が異なることを発見した。今後は、この現象をさらに深く解析し、二次構造からさらに蛋白質の三次構造中の場に、水素結合がどのように依存するかを解析し、新たな力場を構築する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
α-ヘリックスやβ-構造以外のβ-ターン、α-ターン、π-ターン等の二次構造における水素結合エネルギー、n→π*相互作用エネルギーについても同様に解析を行って、力場関数をより精密化する。また、分極効果についてもPCM (Polarizable Continuum Model)法による計算を行い、原子分極効果をあらかじめ加えたパラメータについても考察する。これらの研究に得られた力場モデルを用い、高次構造に依存してその力場モデルをスイッチするエネルギー関数によって、α-ヘリックスとβ-構造の双方を含む蛋白質(20~40残基)に対してMcMD計算を実施し、自由エネルギー地形を算出する。研究の進捗に合わせて、単に水素結合エネルギーやn→π*相互作用エネルギーだけでなく主鎖の二面角に対するエネルギー値についても考察を加え、適宜、新規なエネルギー関数を改良する。できれば、さらに大きな50残基超の種々の蛋白質にも、開発した新規力場関数を適用して自由エネルギー地形を解析し、それらの構造構築のメカニズムを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学術情報センター(大阪大学ではサイバーメディアセンター)の大型計算機システムの使用料に主に研究費を使用する。
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Research Products
(3 results)