2012 Fiscal Year Research-status Report
第二高調波イメージングの応用による神経生理機能解析
Project/Area Number |
23657106
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塗谷 睦生 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60453544)
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Keywords | 光第二高調波発生 / 2光子顕微鏡 / SHG / イメージング / 神経 / アストロサイト |
Research Abstract |
平成24年度には、初年度に開発された新たな色素を用いてのSHGイメージングによる生理機能解析の重要な対象としてグリア細胞に着目し、その基礎的性質の解析を行った。 SHGは、その特殊な発生条件からこれまでの観測では不可能であった生理現象の可視化の可能性を秘めている。特に、これまで他の手法においては計測が困難であった細胞細部などにおける膜電位情報の定量的な可視化への応用が期待されている。しかし、これまで行われてきた既存の色素を用いたSHGイメージングでは、SHG計測の精度が低く、それが生理解析への応用を制限してきた。そこで初年度にはこの現状を打開しSHGイメージングの飛躍的な向上を図るため、SHGに適した新たな色素の開発と応用を試みた。その結果、新たな色素群が合成され、SHGイメージングにおいてはデメリットとなる2光子励起蛍光を最小限に抑えたままSHGシグナルを発するという狙い通りの性質が確認された。平成24年度にはこの新たな色素を用いてのSHGイメージングの応用対象として、近年その重要性が認識されつつも細胞内情報伝達に関する知見が乏しいグリア細胞、特にアストロサイトに着目し、その後のSHG計測の基盤となる生理学的性質の解明を進めた。 2光子励起顕微鏡と蛍光色素の2光子アンケージングを駆使した研究から、アストロサイト足突起が細胞内外での分子の拡散の制御に非常に重要な役割を果たす事が明らかとなった。この結果はアストロサイト足突起が脳の生理学的機能発現に重要な役割を果たす事を示唆するものとなり、SHGイメージングによる膜電位計測の対象としての重要性を明らかにし、今後の解析の指針を与えるものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度には予定通り新たな色素の開発を達成し、平成24年度にはそれを用いた細胞機能解析の基盤となるグリア細胞の基礎的性質を明らかにする事で今後の指針を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、24年度に引き続き新たな色素のSHGへの応用の可能性を模索すると共に、これまでに合成された新たな色素の更なる評価を行う。まず、これらの色素の膜電位応答性を確認する。培養細胞をパッチクランプし、その膜電位を変化させると同時に各色素からのSHGシグナルを計測し、膜電位変化に対するSHGシグナルの変化率を導出し、これまで用いられてきた色素と比較し膜電位のレポーターとしての性能を評価する。次に、2光子蛍光が少ないという特徴による細胞毒性の軽減効果について解析する。膜電位応答性の評価と同様に培養細胞をパッチクランプし、一定強度のレーザー照射による細胞毒性をその静止膜電位の変化として評価する。これらの解析により、これまで合成された新たな色素群のSHG色素としての性能を評価すると共に、更に次の世代の色素合成に対する指針を得る。 最後に、これまでの研究から明らかとなってきたアストロサイト足突起の生理機能解析のため、アストロサイトへのSHGイメージングの応用を試みる。マウスから調整する急性脳スライスを用い、アストロサイトをパッチクランプし、そのピペットからSHG色素を細胞内へ導入する。その後細胞体における膜電位を電流・電圧固定法により変化させ、細胞体での膜電位変化のアストロサイト細部への伝播をSHGシグナルの変化計測から解析する。特にこれまでの研究から生理学的に重要な役割を果たす事が示唆されてきた足突起における膜電位の動態に着目し、アストロサイト細部における初めての定量的膜電位計測とそれによる生理学の解析を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、実験と共にこれまで得られた結果の論文発表を行い、研究費はこれらの目的のために用いる。平成24年度に着手を予定していた論文投稿が遅れたため、その分の予算を平成25年度に繰り越し、投稿関連費に充てる。実験の方では培養細胞の調製・維持に関わる費用、そして色素の購入費が主な支出となる。論文の方では、投稿に当たっての英文校閲、投稿、掲載、別刷などに関わる諸経費が主な支出となる。
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