2011 Fiscal Year Research-status Report
走査型微小光共振器ラマンプローブ顕微鏡の開発と機械刺激に対する細胞応答の動態計測
Project/Area Number |
23657108
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
由井 宏治 東京理科大学, 理学部, 准教授 (20313017)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 細胞 / 走査型顕微鏡 / ラマン / 光共振器 |
Research Abstract |
平成23年度は、細胞への機械的刺激と細胞の動態計測の測定並びに装置開発を中心に行った。具体的には以下の3点について検討した。(1)微小球のサイズと同じマイクロメートルにレーザービームを直接絞り込み、細胞の力学応答を、プローブビームで検出した。(2)走査型原子間力顕微鏡(AFM)探針を用いて、細胞に押し込み、力学的応答を測定、どのくらいの距離から、応答が始まるか、計測した。(3)レーザーラマン分光を行うための、AFMとレーザー光を組み合わせた光学路を設計・試作した。(1)については、HeLa(がん細胞)、Swiss3T3(繊維芽細胞)、酵母細胞について計測を行い、4KHzから1MHzの帯域で周期的力学・機械刺激を与え、その応答を計測し、細胞種ごとの力学応答の周波数依存性に個体差はあるものの明瞭な差異が認められ、機械刺激に対する力学応答の差異を議論する上での、基本的な実験条件等を確立した。(2)については、従来、1つのフォースカーブによって議論されていたが、我々の計測では2か所の傾きの変化する、3段階のフォースカーブが計測された。従来、1つのヤング率の値で、細胞の弾性が議論されていたので、本結果は、押し込み深さによって、その値が定数ではなく、変わり得うることを示していると考えられ、大きな意義を持つものと思われる。本結果は細胞外マトリックスや裏打ち膜蛋白質、サイトゾル等の深さ方向の階層構造を反映している可能性があり、押し込み深さにより、刺激を主に与える場所が変わる可能性が示唆された。この点に関しては引き続き定量的な検討・解析を進めていく。(3)については、基本的な光学設計を完了し、次年度への基盤とした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞に対する力学刺激・機械的刺激は比較的順調にかけることができ、細胞種による力学応答の違いが計測された。また、従来1つの値で代表されていた押し込み変形に対するヤング率が、押し込み深さによって、異なる値をとることを見出したのは予想外の成果であり、学術的にも興味深い知見を得た。これらの内容で現在、2報の論文投稿準備中である。 上述の点は予想以上の進展であったが、一方で、微小球の最適な取り付け方、またレーザーによる励起方法は、次年度の検討課題として残った。微小球の取り付け部分からの光漏れや、レーザーの集光光学系について、本年度中に検討した結果(1)微小球への光導入を、光導波路を通じて行うこと、(2)(計画では光の導入、信号の集光は同一の対物レンズで行う予定であったが)、光の導入は、カンチレバー上方から、カンチレバーの先に突き出た光導路を通じて、またラマン信号の取得はカンチレバー側面から行うこと、でより効率的な励起・信号の取得ができる光学系に設計をし直し、基本的な光学路の設計が終了した。 以上を総合すると、機械的刺激に対しては予想以上の進展が得られたものの、光学系に対して改善しなくてはいけない困難な点が発見されたので、分光に対しては当初の計画に比べてやや遅れたものの、その解決策を見出しそのための基本設計が終了したので、全体としては概ね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
微小球まわりの光学設計の最適化・実験等は当初の計画よりやや遅れている感があるので、この点に関してH24年度は集中的に進めたい。とりわけ、レーザー光の導入方法、ならびに微小球のAFMのカンチレバーへの取り付け方に、工夫を施さないと、細胞表面以外からの一般のラマン散乱光との識別、共振の効率に難しさが生じる。対応としては、計画設計段階のイルミネーションコレクションモードではなく、カンチレバー上面から微小球に光をin、側面から伝搬ラマン散乱光を拾うなどの対応で、目的のラマン信号を得たい。この点をクリアできたら、時分割測定等は、ミリ~サブミリ領域であり、電気回路的にも特に問題なく進められると予測している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品としては、対物レンズの深度方向の調整が、手動では大変厳しいレベル(マイクロメートル以下)であることが判明したので、対物レンズ用のピエゾZステージを導入することで、これを解決する。他は、消耗品、旅費、その他、計画書通りの使用を計画している。
|