2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞選択的人工神経細胞回路の構築による細胞間コミュニケーションの解析
Project/Area Number |
23657111
|
Research Institution | Kanagawa Academy of Science and Technology |
Principal Investigator |
寺薗 英之 (財)神奈川科学技術アカデミー, 安田「一細胞分子計測」プロジェクト, 研究員 (30398143)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | マイクロパターニング / アガロース / 神経ネットワーク / 神経細胞 / 多電極同時計測 / 細胞外電位 |
Research Abstract |
【平成23年度実施計画: 形態学的・電気生理学的な特徴を同定した一細胞回収・再配置技術の開発】 初代神経細胞を用い、一細胞毎に伝達方向・細胞の種類を制御した人工的神経細胞回路を構築することで従来の分散培養や脳組織を利用したスライスカルチャーでは複雑すぎて理解できなった神経のネットワークレベルでの基本動作原理、記憶形成機構、情報処理機構の解明を目的としている。【研究結果の具体的内容】形態学的な特徴を同定した一細胞回収技術としてアルギン酸細胞回収技術とアガロースマイクロ加工技術との組み合わせによる技術開発を試みた。技術課題として、キレート剤を局所的に反応させることにより接着培養している細胞を一細胞単位で回収できるアルギン酸シートの熱変性を防ぎながら、マイクロ加工できる技術の開発が必要になる。そこで、ゾル化が低融点で起こるものからアガロースの素材選定を始めた。その中で約65℃付近から融解する低融点アガロースを用いた結果、アルギン酸シート上にコートしたアガロースでマイクロ加工する事に成功した。次に、マイクロ加工する形状について検討した結果、細胞体を配置するためマイクロチャンバーと呼ぶ円状の加工から軸索や樹状突起を誘導するための棒状のマイクロチャネルを伸ばすように加工した構造上で細胞を培養することにより細胞を孤立培養し形態学的に確認する事ができるようになった。マイクロチャンバーの大きさマイクロチャネルの形状により細胞認識に適している大きさを明らかにした。この形状に於いて神経細胞培養株であるPC12細胞の孤立培養を成功し、一細胞単位で回収・再培養に成功した。【意義・重要性】神経細胞は他の細胞に比べ脆弱で、複雑な神経突起を伸張するため一細胞単位での回収は非常に困難であった。本技術により特定の培養神経細胞を回収し神経ネットワークを人工的に構築できる技術が開発できた。論文投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究内容として、形態学的・電気生理学的な特徴を同定した一細胞回収・再配置技術の開発を掲げた。その中で、申請書に記載した形態学的な特徴を指標として一細胞単位で回収・再配置できる事を原理的に明らかにし、現在その成果を論文として投稿中である。現在、株化細胞による検討から初代海馬神経細胞についても同様に行っており、同様の結果を得ている。さらに、多電極上でアガロース、アルギン酸シート作製する事で細胞外電位を指標とした細胞選別の可能性についても検討中である。技術的な課題はあるが進行状況としてはおおむね順調に進展していると自己評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の推進方策として、平成23年度の研究計画のさらなる詳細な検討と平成24年度の計画に記載した特定の神経細胞を利用した人工神経細胞回路の基本演算モジュールの作製と検証について検討する。そのために、特定の細胞を回収した後、細胞外電位を一細胞単位で記録することによって性質が変わるかどうかを検討を進める。その後、マイクロ加工を施した培養シャーレに選別した細胞を一細胞ずつ配置する。また、マイクロ加工する培養シャーレは、多電極細胞外電気記録装置上に加工する事により、パターニングされた神経細胞を同時に記録する予定である。シャーレに施された多電極は電位記録以外に電極上の細胞を刺激することも可能であるため、自発発火による神経伝達以外に外部から自在に電気刺激を加えることで神経発火パターンがどの様に変化するか計測する。作製する神経細胞回路としてはまず、一つの神経細胞に対し、神経発火頻度の異なる2種類の神経細胞を入力させ、入力を受けた細胞がどの様に応答するか検討を行う。その際、入力神経の片方に対し、高頻度刺激を与えることで与えなかった方からの入力との情報伝達の違いを検討する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画として、特に消耗品の購入を中心に計画している。特に細胞外電位の計測に必要な多電極アレイチップは通常の培養シャーレより高額なため多くの検討を進める上で研究費の多くを使用予定である。その他、初代培養細胞の培養のためのラット購入、培養に関する試薬、プラスチック器具、評価・解析に必要なソフトウェアの購入を予定している。
|