2011 Fiscal Year Research-status Report
真核生物ミスマッチ修復がクロマチン上で機能するための分子機構の解明
Project/Area Number |
23657114
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 達郎 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50452420)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ミスマッチ修復 / 突然変異 / DNA複製 / DNA修復 / クロマチン / ツメガエル卵抽出液 |
Research Abstract |
ミスマッチ修復はDNA合成の誤りを修復する複製後修復機構であり、突然変異、発がんの抑制に重要な機能を持つ。これまでの研究から、ミスマッチ修復機構がDNA上で機能する分子機構については理解が進みつつある。一方で、ミスマッチ修復が機能するDNA合成直後にはクロマチンの再形成も起こる。ところが生理的なクロマチン形成を試験管内で再現する実験系は少なく、ミスマッチ修復機構がクロマチン上で機能するためにどのような反応が必要であるのかはよくわかっていない。我々はクロマチン形成とミスマッチ修復を試験管内で効率よく再現するツメガエル卵抽出液(NPE)をモデル系に用い、クロマチン上でミスマッチ修復が機能するために必要な因子と反応の解明を目指して研究を行った。本研究ではまずNPE中ではミスマッチ塩基周辺のクロマチン形成が強く抑制されることを発見した。この反応はミスマッチ修復因子に依存していたことから、ミスマッチ修復機構がクロマチン形成を抑制すると考えられた。我々はこの反応をさらに詳しく解析し、ミスマッチに依存したヌクレオソームの除去反応が起きていることを見いだした。さらにクロマチン形成がミスマッチ修復に与える影響を調べるため、NPE中でのクロマチン形成を阻害することを試みた。DNA複製に依存して機能するヒストンシャペロンであるCAF-1、DNA合成非依存的に機能するHIRAに対する抗体をそれぞれ作成して免疫除去を行ったところ、NPE中でのクロマチン形成は主としてこの二つのシャペロンに依存することがわかった。これらを用いて、CAF-1およびHIRAの除去がミスマッチ修復の効率に与える影響の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、ミスマッチ周辺でのクロマチン形成抑制の反応機構を解析し、この反応がヌクレオソームの除去を伴うことを明らかにした。この結果はクロマチンリモデリング因子のようなヒストン除去を可能にする因子がこの反応に関わる事を強く示唆する。さらにこの反応に必要なミスマッチ修復因子と、必要でない因子を切り分けた。ヌクレオソーム除去反応に関わる因子を同定するため、ミスマッチDNAをビーズに固定化し、プルダウン法により回収することに成功した。この画分にはMutS、MutLなどのミスマッチ修復因子が特異的に含まれていることを既に確認している。さらにヒストンシャペロンの除去により、DNA合成に依存したクロマチン形成、依存しないクロマチン形成をそれぞれ制御することが可能になった。総合的には初年度に計画した計画内容の大部分を達成し、かつ計画内容以外の進展も大きく、おおむね順調な進展と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究進展を受け、24年度はヌクレオソーム除去反応に関わる因子の同定を目指す。同時にこの反応がミスマッチ修復にどのように機能するかを明らかにする。1.ヌクレオソーム除去反応に関わる因子の同定平成24年度の研究では、ミスマッチを含むプラスミドDNAをビーズに結合させ、NPE中から回収する実験系を構築した。本年度はこの実験系を用い、ミスマッチに依存してDNAに結合する因子の網羅的同定を試みる。ヌクレオソーム除去に関わる因子はミスマッチを含むDNAに特異的に局在することが期待されるので、回収された因子からヌクレオソーム除去に関わる因子を探索する。2.ヌクレオソームとミスマッチ修復の機能的相関現在、クロマチン構造がミスマッチ修復にどのように影響するかはよくわかっていない。クロマチン構造がミスマッチ修復の効率に与える影響を調べるため、CAF-1やHIRAの免疫除去を利用して、クロマチンが形成されない環境下でミスマッチ修復の効率がどのように変化するかを調べる。また1の解析から同定された因子をNPEから免疫除去することにより、ミスマッチに依存したクロマチン形成抑制反応がミスマッチ修復の効率にどのように影響するかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では、主として研究の遂行に必要な試薬、物品の調達のために研究費を利用する。これにはツメガエル卵抽出液作成に必要な実験動物、試薬、交代作成費用や基本的な試薬・消耗品が含まれる。
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