2011 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムに傷を抱えて増殖する細胞のDNA損傷チェックポイント機能発現の揺らぎの理解
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23657115
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
臼井 雄彦 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (70533115)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | DNA損傷チェックポイント / ゲノム安定性 / シグナル伝達 / ガン化分子メカニズム / 出芽酵母 |
Research Abstract |
超高齢化社会となった日本では今後、散発性のガンの増加は避けられず、そのガン化メカニズムの理解は重要である。散発性のガンは、究極的には、様々なストレスをうける細胞集団に出現した一個の異常細胞が増える病気といえる。よってストレス下にある細胞集団の中で正常と異常のはざまにある細胞の挙動を知る必要がある。申請者は、慢性的なDNA損傷ストレス下にある細胞において、細胞周期を停止していたDNA損傷チェックポイントの強制的な不活化が起こると、不活後の細胞の再増殖は不均一に起こることに注目する。よって本研究ではゲノムに傷を持って再増殖する細胞の性質を知ることを目的に、その不均一な増殖を、娘細胞によるDNA損傷チェックポイント機能の発現の揺らぎとして捉えられるか調べ、その揺らぎに影響する要因を検討する。 DNA損傷に長時間曝された酵母細胞は、DNA損傷チェックポイントの強制的な不活化を起こし、再び細胞増殖を始める。本年度は、これら再増殖細胞におけるDNA損傷の存在とDNA損傷チェックポイント活性化状態をモニターするための系の構築を試みた。まずDNA損傷チェックポイント蛋白Ddc2と蛍光蛋白CFPの融合蛋白を発現する酵母株を作成し、観察を試みた。しかし、予想したような観察像を得る条件設定が出来ていない。今後はより蛍光シグナルの強い蛋白と融合して条件設定を行う。一方、Ddc2とその下流にあるDNA損傷チェックポイント蛋白Rad9の融合蛋白を発現するとDNA損傷チェックポイントを過剰に活性化できることを見出した。従って、この融合蛋白の発現調節の系を構築する事によってDNA損傷チェックポイントの活性化状態をコントロールできる可能性があるので、次年度以降の研究に有用な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、Ddc2と蛍光蛋白の融合蛋白の蛍光シグナルが予想していたより弱かったので、DNA損傷チェックポイントが活性化してから強制的に不活化するまでの長時間にわたるタイムコースにおける条件設定に時間を取られ、また所属研究室にあるDelta Vision蛍光顕微鏡システムのバージョンアップが行われたが、システム再稼働の移行期間もあったことが計画の遅延につながっている。一方でDdc2とRad9の融合蛋白の解析にも時間を費やしたが、この融合蛋白は、今後の解析に役立つと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
よりよい観察条件を見つけるために、様々な蛍光蛋白とDdc2の融合蛋白の組み合わせを発現する酵母株を作成する。それぞれの株で修復できないDNA二重鎖切断を形成した時の蛍光フォーカスとマイクロコロニー形成の経時変化を所属研究室にあるDelta Vision蛍光顕微鏡システムのタイムラプス機能を用いて撮影する。観察に最も適したDdc2融合蛋白を決定し、それに適合する蛍光蛋白をDNA損傷のマーカーとなるRfa1蛋白と融合させてDdc2融合蛋白と同時に発現できる酵母株を作成する。この株を使って、再増殖細胞の挙動を調べる。マイクロコロニー内の細胞の世代を追って蛍光フォーカスと細胞分裂について解析を行う。出芽酵母は不等分裂をするので、分裂した細胞の系譜が追跡しやすいのが強みとなる。DSBの存在を示すRfa1フォーカスを持つ細胞について解析する。Ddc2-CFPフォーカスの存在と一世代の細胞分裂の時間の関係から、チェックポイント機能を保持する細胞と保持しない細胞の出現を記録する。DNA損傷チェックポイント機能発現の揺らぎを顕著に示すと考えられる細胞が出ないか注目する。 DNA損傷チェックポイント機能発現の揺らぎの要因として、DNA損傷を最初に受ける細胞のDNA損傷チェックポイント能力の影響とエピジェネティクスの影響を調べるために、それぞれrad9-S1129A変異株やヒストン修飾変異株のバックグラウンドで、Ddc2とRfa1フォーカスの挙動を調べる。また本年度得る事のできたDdc2-Rad9融合の発現によってDNA損傷チェックポイントの活性化状態をコントロールできる系も構築し、その影響も調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じたのは、実験条件の設定に時間がかかっていることと、問題解決のための文献調査を行っていたために、本実験が始まっておらず、計画当初に予想していたほど、培地、試薬などの消費がなかったためである。次年度は、当該研究費を合わせて、新たな蛍光蛋白の発現ベクターと本研究に必要なプラスミドと酵母株作成のための合成DNAや、実験に必要な試薬、培地といった消耗品の購入と学会発表のための旅費などに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)