2012 Fiscal Year Research-status Report
ゲノムに傷を抱えて増殖する細胞のDNA損傷チェックポイント機能発現の揺らぎの理解
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23657115
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
臼井 雄彦 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (70533115)
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Keywords | DNA損傷チェックポイント / ゲノム安定性 / シグナル伝達 / ガン化分子メカニズム / 出芽酵母 |
Research Abstract |
超高齢化社会となった日本では今後、散発性のガンの増加は避けられず、そのガン化メカニズムの理解は重要である。散発性のガンは、究極的には、様々なストレスをうける細胞集団に出現した一個の異常細胞が増える病気といえる。よってストレス下にある細胞集団の中で正常と異常のはざまにある細胞の挙動を知る必要がある。申請者は、出芽酵母をモデルに慢性的なDNA損傷ストレス下にある細胞において、細胞周期を停止していたDNA損傷チェックポイントの強制的な不活化が起こると、不活後の細胞の再増殖は不均一に起こることに注目する。よって本研究ではゲノムに傷を持って再増殖する細胞の性質を知ることを目的に、その不均一な増殖を、娘細胞によるDNA損傷チェックポイント機能の発現の揺らぎとして捉えられるか調べ、その揺らぎに影響する要因を検討する。 本年度は、前年度に開発したDNA損傷チェックポイント蛋白Ddc2とRad9の融合蛋白によるDNA損傷チェックポイントキナーゼRad53の活性化の系の作用機構を調べた。Rad53の活性化にはRad9のヒストン修飾を介したクロマチン結合が重要である。今回、Rad53が活性化されない減数分裂細胞を用い、Ddc2-Rad9融合蛋白質が、Rad9のクロマチン結合能力を必要とせずに、Ddc2によってDNA損傷部位に局在し、Rad53を活性化することを見出した。またRad9の機能は、Ddc2と結合するMec1キナーゼによるリン酸化によって活性化されるが、Ddc2-Rad9融合蛋白質によるRad53の活性化もMec1によるリン酸化に依存していた。 細胞の再増殖時におけるDNA損傷チェックポイント機能発現の揺らぎは、ヒストン修飾の作用を受ける可能性がある。よって今後、Ddc2-Rad9融合蛋白の発現調節の系を構築する事によって、揺らぎをリセットした時の影響を調べることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目的にある再増殖細胞におけるDNA損傷の存在とDNA損傷チェックポイント活性化状態をモニターするための系の構築を試みた。DNA損傷チェックポイント蛋白Ddc2と蛍光蛋白の融合蛋白とDNA損傷のマーカーとなるRfa1蛋白と蛍光蛋白の誘導蛋白を同時に発現する酵母株を作成したが、予想したような観察像を得る条件設定が出来ていない。今後も引き続き、条件の改良を試みる。一方で、Ddc2-Rad9融合蛋白によるDNA損傷チェックポイント活性化の作用機序が明らかとなってきているので、この系も利用して研究を推進して行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、よりよい観察条件を見つけるために、様々な蛍光蛋白とDdc2の融合蛋白の組み合わせを発現する酵母株を作成する。それぞれの株で修復できないDNA二重鎖切断を形成した時の蛍光フォーカスとマイクロコロニー形成の経時変化を所属研究室にあるDelta Vision蛍光顕微鏡システムのタイムラプス機能を用いて撮影する。観察に最も適したDdc2融合蛋白を決定し、それに適合する蛍光蛋白をDNA損傷のマーカーとなるRfa1蛋白と融合させてDdc2融合蛋白と同時に発現できる酵母株を作成する。 Ddc2とRfa1の組み合わせの決定が困難なことを考えて、今後、染色体の各部分(テロメア、アーム、セントロメア)を蛍光蛋白でマークする系を導入して、再増殖細胞において、染色体の安定性にどのような影響が起きるか調べる。またDdc2-Rad9融合蛋白の発現を調節できる系と組み合わせることによってDNA損傷チェックポイントの活性化状態をコントロールできる系も構築し、その影響も調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じたのは、計画当初に予想していたほど、培地、試薬などの消費がなかったためである。次年度は、当該研究費を合わせて、新たなプラスミドと酵母株作成のための合成DNAや、実験に必要な試薬、培地といった消耗品の購入と学会発表のための旅費などに使用する予定である。
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Research Products
(3 results)