2011 Fiscal Year Research-status Report
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23657143
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
千葉 和義 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (70222130)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 減数分裂 / 精子 / 卵 / ヒトデ / 星状j体 / 紡錘体 |
Research Abstract |
ほとんどの動物で、卵減数分裂の途中で受精は成立し、卵減数分裂が完了するまで精子中心体は、卵分裂装置に干渉しない。卵減数分裂が完了すると、精子中心体から伸びる紡錘糸は、精子・卵由来の染色体全てと結合する。では「なぜ、精子星状体は卵減数分裂に干渉しないでいられるのか?」 平成23年度は、仮説「卵中心体から伸びる微小管によって、すでに卵染色体の動原体は占有されているために、精子中心体からの微小管が結合できない。」の真偽を明らかにするのが目的となっていた。実験の結果、確かに第一分裂中期においては、51/51の割合で、精子中心体は卵由来の紡錘糸と干渉せず、美しい2極の中期紡錘体が形成された。しかし、今回、正常なタイミングで受精させた多精卵において、第二減数分裂中期について注意深く観察したところ、138/146では正常な中期紡錘体であったが、8/146(約5%)において3極の紡錘体であることが判明した。この成果は、全ての試料について共焦点顕微鏡で観察したことで得られたものである。それでは、5%の干渉は、卵染色体と精子中心体(星状体)が相互作用してしまうほど、近い距離にあったためなのであろうか?この疑問点を解明するために、本研究では、共焦点顕微鏡を用いて、二極間の距離計測を行った。正常な紡錘体を形成している卵で、紡錘体と精子星状体が近い3例を選び、その距離を測定したところ、平均6.7μmであった。一方、第二減数分裂中期における多極紡錘体の3極間の距離を測定したところ11μmであった。したがって、二極間の距離が短いから干渉するわけではないことが示された。しかし、ほとんど(95%)の卵では干渉していなかったことから、卵紡錘体の近傍に精子星状体が存在していても、干渉しにくい機構はあると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、これまでの結果から、GVBD直後にGV周辺で収束するアクチン網の存在が、干渉機構に大きく関与しているのではないかと考えている。すなわち、アクチン網が収縮するために卵染色体は素早く動物極に集められると考えられており(Lenart et. al. 2005)、正常時(MI期)に精子が卵内に侵入してくる時には、卵染色体はアクチン網に絡み取られ、引き続き速やかに卵中心体によって捕まえられる。したがって、その間に卵内に入った精子星状体は、卵の第1減数分裂には干渉できない。 第2減数分裂において精子星状体が卵紡錘体に干渉するのは、卵half spindleの時に、散らばっている染色体に、たまたま近くにいた精子星状体が働きかけた結果であると考えられる。通常受精では卵内の精子星状体の数は1つなので、干渉する確率は非常に低い。しかし本研究のように、多くの精子が卵内に入っている多精卵では、half spindleの近くに精子星状体が分布する確率も高くなるために、低い割合ではあるが干渉した。 したがって、23年度申請書に記載の仮説A「卵中心体から伸びる微小管によって、すでに卵染色体の動原体は占有されているために、精子中心体からの微小管が結合できない。」はMII期では偽である。さらに、仮説B「精子中心体から伸びる微小管先端構造は、(卵中心体のものとは、何らかの点で構造が異なるために)、卵由来染色体と結合できない」については、MII期において、干渉できるために、偽である。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は仮説ABのどちらかが正しい場合について計画を立てていた。しかし、23年度の研究において、MI期において干渉しない理由として、第三の仮説C「正常時(MI期)に精子が卵内に侵入してくる時には、卵染色体はアクチン網に絡み取られ、引き続き速やかに卵中心体によって捕まえられるために、その間に卵内に入った精子星状体は、卵の第1減数分裂には干渉できない。」が考えられた。そこで24年度は仮説Cの真偽を明らかにする。そのためにまずは、経時的に固定した染色卵を作成して、共焦点顕微鏡で観察する。これによって、アクチン網と卵染色体、そして精子星状体がどのような配置となって、干渉されることを免れているのかを明らかにする。さらに、in vivo観察技法も開発して、これを確かめる。以上の研究によって、MI期における干渉防止機構が明らかにできる。 MII期においては、5%の割合で干渉することが、23年度の研究から明らかになった。これは当初予測していなかった結果であるが、新たに共焦点顕微鏡を用いた詳細な解析から判明した。この結果からは、精子星状体から伸びる微小管が干渉しない構造になっているのではないことが強く示唆される。しかし、精子星状体のごく近傍に位置する卵染色体でも、全て精子星状体由来の微小管と相互作用するわけではない理由は不明だ。干渉する場合と干渉しない場合に、どのような違いがあるのか?一つの可能性として、MI~MII期において卵星状体から離れた卵染色体と精子星状体の位置関係に鍵があるかもしれない。すなわち、精子星状体が動植軸に位置した時に、干渉が起こりやすいかもしれない。この可能性を検討するために、それぞれの位置情報を明らかにできるように、観察法を改良する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
共焦点顕微鏡による観察のための消耗品(抗体、ガラス器具等)を使用する。微小管・染色体結合タンパク質発現用試薬一式とマイクロインジェクション用消耗品一式、すなわち染色体に結合するensconsin-3GFPのmRNAを作成し、卵内にマイクロインジェクションする実験と、さらに微小管に結合するタンパク質RanにAlexa-568で蛍光標識したものを卵内にマイクロインジェクションする実験でin vivo, リアルタイムで観測を行う。さらに、実験動物費、論文校正・投稿費、学会発表費を使用する
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