2011 Fiscal Year Research-status Report
コドン頻度を応用した新規手法による非組換えワクチンウイルスの作出
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23657156
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
柿澤 茂行 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (10588669)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | コドン頻度 / 弱毒ウイルス / 実験室内進化 |
Research Abstract |
弱毒ウイルス(ワクチンウイルス)とは宿主内における病原性や増殖力の低いウイルスのことであり、多くの実用化例がある一方で、その復帰変異が大きな問題となっていた。近年考案されたレアコドンウイルスは、復帰変異しにくく、抗原として優れ、多くのウイルス種に対して水平展開可能といった利点を持つことから、従来のワクチンウイルスの問題点の多くを克服した次世代のワクチンウイルスとして期待されているが、遺伝子組換えウイルスである点が問題である。本研究は、遺伝子組換えを用いることなくレアコドンウイルスを作出する斬新な手法を考案し、これを植物ウイルスワクチンとして利用するための系を確立することを目的とする。宿主としてはシロイヌナズナを用いる。 まず、シロイヌナズナゲノムにおけるコドン頻度を調べ、レアコドンをリストアップした。加えて、シロイヌナズナ以外の植物種についても同様にコドン頻度を調べた。その結果、多くの植物ではコドン頻度が比較的似ており、レアコドンも似通っていることがわかった。加えて、いくつかの植物ウイルスにおけるコドン頻度を調べたところ、宿主である植物ゲノムのコドン頻度とある程度の相関関係にあることがわかった。これは宿主内におけるウイルス遺伝子の効率的な転写翻訳を考えると、妥当な結果だと思われた。 次に、レアコドンに対応するtRNA遺伝子を用いて植物を形質転換する系を検討した。遺伝子導入系やプロモーター系等を検討した結果、tRNA遺伝子の導入にはアグロバクテリウムを用いた通常の形質転換法を用いるのが最適であろうと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、シロイヌナズナゲノムにおけるコドン頻度を調べ、レアコドンをリストアップし、レアコドンに対応するtRNA遺伝子をシロイヌナズナへと導入するための系を検討し、その後の研究も進展中である。その結果、多くの知見が得られたと同時に、来年度への研究の展開に向けた準備段階を遂行することができたことから、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を踏まえ、来年度は研究を大きく進展させる予定である。具体的には、レアコドンに対応するtRNA遺伝子をシロイヌナズナへと導入するための系を検討したため、これを用いて形質転換シロイヌナズナを作出し、レアコドンウイルスの作出を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主に消耗品のために使用する予定であり、このほかに情報収集のための旅費を考えている。消耗品については、シロイヌナズナの育成や形質転換のための準備に関わる菌体の培養等で主に用いる。次年度使用額については、シロイヌナズナにおいて各コドンに対応するtRNA遺伝子の発現量についての調査が追加で必要になったため、この解析に用いる予定である。
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