2011 Fiscal Year Research-status Report
光環境適応に関わるトレードオフの遺伝的背景:スミレ属2種を用いた分子進化生態学
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23657158
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
遠山 弘法 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (00571837)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 雑種集団 / ゲノムの置き換わり / AFLP / QTL / 光環境 |
Research Abstract |
エイザンスミレ、ヒゴスミレの雑種集団の解析について形質から判断された雑種集団(約1 km×1 km)で1か所あたり6個体ずつ30箇所から採集し、実際に雑種かどうかをmtDNA(atpI-atpH)、AFLPを用いて調べた。結果、エイザンスミレ、ヒゴスミレに特有のAFLPバンドの両方を持っている個体が、雑種集団内で81個体(58.3%)見つかった。また、ヒゴスミレを母系に持ちながら、ゲノムがエイザンスミレに置き換わっている雑種が9個体つかった。これらの結果は、林床環境に適応的な遺伝子が、雑種形成後、集団中に固定されてきたことを示唆する。また、これまでの研究から種間で多様化している葉形質を測定したところ、Hybrid indexと形質には正の相関がみられた。この結果は、光環境の適応に重要だと考えられる葉形質は、両種を識別するのに重要な形質である事が示唆された。以上の結果は、Society for Molecular Biology & Evolutionでポスター発表を行った。現在草稿を作成中である。QTL解析について23年度は、エイザンスミレ、ヒゴスミレのそれぞれの葉からRNAを抽出しcDNAを合成、そして、次世代シーケンサーを用いて発現している遺伝子を網羅的に解析し、種間で異なる発現パターンを持つ遺伝子を特定し、マーカーを作成する予定であった。しかし、RNAの抽出がうまくいかず解析が進まなかった。QUIAGENのRNeasy plant mini kit、TakaraのFruitmate for RNA Purificationを試したがうまくいかなかった。23年度の結果をもとに、24年度はAFLPやマイクロサテライトでマーカーの開発に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要の概要部分でも触れたが、23年度は、エイザンスミレ、ヒゴスミレのそれぞれの葉からRNAを抽出しcDNAを合成、そして、次世代シーケンサーを用いて発現している遺伝子を網羅的に解析し、種間で異なる発現パターンを持つ遺伝子を特定し、マーカーを作成する予定であった。しかし、RNAの抽出がうまくいかず解析が進まなかった。QUIAGENのRNeasy plant mini kit、TakaraのFruitmate for RNA Purificationを試したがうまくいかなかった。23年度の結果をもとに、24年度はAFLPやマイクロサテライトでマーカーの開発に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
エイザンスミレ、ヒゴスミレの雑種集団の解析論文化する。QTL解析について23年度の失敗をもとにAFLPでのF2世代を用いた連鎖地図の作成を行う。また、F2世代の花形質、葉形質、資源分配形質の測定を行いQTL解析を行う。ただし、相関がある形質については、前もって主成分分析により次元を減らし、その主成分得点に対してQTL解析を行う。QTL解析は、F2個体のマーカー遺伝子型と表現型値を調べ、形質に関わるQTLの位置を染色体上で特定する。そして、近接するマーカー遺伝子型に基づいてQTL遺伝子型を推定し、最尤法により遺伝効果を推定する。遺伝効果の推定から、トレードオフに関わる遺伝子座群から拮抗的な多面発現効果を持つQTLを検出できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文化に向けての英文校閲、掲載料の支払を行う。23年度は他のプロジェクトでの実験で、本研究にさける実験時間が少なかった。そこで24年度は、テクニカルスタッフを雇って集中的に実験を行ってもらう。テクニカルスタッフには、追加のDNA抽出、AFLP実験、シーケンス実験を行ってもらう予定である。また、花の時期の形質測定は一人で行うと一日では終わらないので、アルバイトを雇い形質測定の補助をしてもらう。具体的には、圃場での花、葉の計測、種子数のカウント、花弁面積、葉面積の測定を手伝ってもらう予定である。今年度の予算の多くはテクニカルスタッフ、およびアルバイトにあてる予定である。
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