2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23657160
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
田村 浩二 東京理科大学, 基礎工学部, 准教授 (30271547)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | RNA |
Research Abstract |
リボスイッチは、mRNA中に存在する小分子を認識する天然のRNAアプタマーであり、遺伝子発現を制御している。当該年度においては、最小のアミノ酸であるグリシンを認識することにより、遺伝子発現をオンにし、かつ、天然のリボスイッチの中で、唯一、アロステリック制御を示す「グリシン-リボスイッチ」の最小構成要素の解明に焦点を当て研究を実施した。ステムとループから構成される構造体がタンデムにつながった形態をしているグリシン-リボスイッチのうち、これまでに、コレラ菌、枯草菌などのグリシン-リボスイッチでグリシンの協同的結合が報告されているが、遺伝子発現制御をタンパク質レベルで確認した例は、枯草菌のものに限られている。種々の生物のゲノム配列を解析した結果、既知のグリシン-リボスイッチ様配列中、最小のサイズを持つFusobacterium nucleatumのものに注目した。特にタンデムにつながったRNAの2番目の構造体の下流の10ヌクレオチド付近の注目し、これと相互作用する配列を持つスペーサーを付加した上で、eGFPの遺伝子をさらにその下流に繋げたモニター系を構築した。この系は、枯草菌の系のものと同様に、グリシンの有無によって、eGFPの発現を制御していることを示唆する結果を示した。Fusobacterium nucleatumのグリシン-リボスイッチ様配列は枯草菌のグリシン-リボスイッチに比べ、数十ヌクレオチドも小さいサイズなのにも関わらず、枯草菌のものと同様なメカニズムで動作している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、東日本大震災の影響もあり、研究実施場所である東京理科大学基礎工学部生物工学科においても、度重なる節電対策、また入構制限が行われた。その結果、当初予定していた計画通りには、研究を実施できないという状況になり、現状はやや遅れている。研究費の使用額についても、当初予定していた額よりは少なくなってしまったのは、この未曾有の大震災の影響が否めない。しかしながら、当該年度の研究を開始するにあたり、既に、枯草菌のグリシン-リボスイッチの作用をeGFPの発現でモニターする実験系の構築が完了しており、この枯草菌の系を用いたグリシンの有無によるeGFPの蛍光レベル解析を進めることにより、Fusobacterium nucleatumのグリシン-リボスイッチ様配列の系を用いた同様のシステムの構築確立の点においては、順調なスタートが切れたと考え、「研究実績の概要」で示したレベルまでは達することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度にeGFPの発現モニタリングによって動作が示唆されたFusobacterium nucleatumのグリシン-リボスイッチ様配列の系を用いて、グリシンの認識部位と認識形態を同定する。このために、種々の領域を切断したRNAや塩基の置換を行ったRNAを用いたグリシンの結合実験を行うことにより、グリシンの認識部位を明らかにする。更に、得られたグリシン結合領域をもとに、グリシンからアラニンへの認識変換を試み、遺伝暗号との関わりについても議論する。また、当該年度に注目したタンデム構造の2番目のRNAの下流に存在する10ヌクレオチドのコンフォーメーション変化に基づく発現制御メカニズムの細胞中での意義を明らかにするために、通常の水溶液環境のみならず、細胞内環境を模倣できる溶液条件下における発現制御の振舞いを解析していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実施場所である東京理科大学基礎工学部生物工学科には、実験を行うための、培養装置、遠心機、電気泳動装置などの共通機器が備わっている他、研究室内にも諸機器(RNA、ペプチドなどを厳密に分離・精製するための高速液体クロマトグラフィー装置、RNA・ペプチドの相互作用解析に用いる分光光度計、および、中規模な有機合成実験に用いることのできるスピードバックなど)が設置されている。このように、主な機器がそろっているので、研究経費の大半は、分子生物学、生化学、物理化学的実験に必要な消耗品費(研究全般)に充てる予定である。更に、関係諸領域の研究者との研究打合せのための旅費、および、国内外での学会等での成果発表のための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(16 results)