2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
貴島 祐治 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60192556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高牟禮 逸朗 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (90179557)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 雑種強勢 / イネ / F1種子 / 形質指標 / ゲノム指標 / マイクロアレイ解析 |
Research Abstract |
今年度、イネのジャポニカ5系統、インディカ3系統、野生イネであるルフィポーゴン3系統およびグラベリマ4系統を用いて、98組み合わせの交配からF1種子を得た。まず、雑種強勢の形質の指標を得るために、日本晴系統を種子親及び花粉親として上記のそれぞれの系統間で得た雑種を利用して、種子の重さを量った。雑種種子の重さは、全ての組み合わせで日本晴およびもう一つの交配親の種子重を超えることはなかった。このことは、胚や胚乳のサイズにも反映されていた。発芽後3日までのシュートの伸長を観察した結果は、日本晴と他のジャポニカ系統やインディカ系統の組み合わせでは両親に対して雑種で目立ったビガーを示すものはなかったが、ルフィポーゴンやグラベリマを花粉親にした場合においてのみ、雑種のシュートの伸長は両親よりも旺盛になった。しかし、それらを種子親にした時には、ビガーは観察されなかった。日本晴を種子親にした時の母性効果が、ルフィポーゴンやグラベリマとの交配において発揮されたと考えられる。しかし、全体的に種子や発芽の初期ではイネの場合目立った雑種強勢は起こらないことが判った。その後、いずれの組み合わせにおいても雑種の方がよく成長し、両親を超える形態をもつことから、成長のある時点で、雑種強勢を表すステージがあることを予想させる。また、雑種強勢のゲノム指標作成のため、日本晴と台中65号のF1個体の葉と葯から抽出したRNAを用いて、反復配列と遺伝子配列を含むマイクロアレイ実験を行った。両親と比較し、F1個体で発現が上昇した因子の中で、多く出現したのはリボゾームRNA関連の配列であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初60組み合わせのイネ雑種の作出が、98組み合わせに増加したことから、解析の幅が広がった。雑種種子の形質を調査するため、種子からその成長過程を追っている。種子の大部分を占める胚乳の遺伝的寄与は、母親が2に対し父親は1である。胚乳では両親ゲノム間の拮抗作用があり、通常の雑種強勢とは異なる形質の現れ方をすることが、日本晴と他11系統との相反交雑から、共通して見いだされたことは、大きな成果であろう。発芽初期の実生の伸長度合いは、胚乳の影響を受ける。栄養を必要とする発芽初期は、従って、雑種強勢の発現が発揮されないのかもしれない。ただ、日本晴を種子親、ルフィポーゴンとグラベリマ系統を花粉親にした場合、雑種の実生の伸長は全て両親を凌駕した。現象としては興味深いが、どのような機構が関与しているのかかなり難しい問題である。最終的に形態的な雑種強勢は、どの雑種にも起こるので、発芽初期の状態から、雑種強勢状態に移行するのがどのタイミングで起こるのか今後解析すべき問題である。マイクロアレイの解析から雑種で高発現する転写産物がリボゾームRNAと関連していることが判明した。細胞の働きを活性化するために、翻訳を効率的に行うための手段と捉えられる。以上のことから、当初の計画以上に研究が進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は雑種強勢が発生する時期を、イネの生育ステージを追いながら調査する。ゲノム指標に関してはリボゾーム関連の配列に着目して解析を続ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、主に交配を中心に材料の作出を行ったので、解析に掛かる費用が見積もりより少なくなった。平成24年度は主としてイネ雑種強勢の形質調査を行うための費用とゲノム指標を獲得するための費用、いずれも消耗品費として使用する。そのほか、当該研究に関連した発表(論文や学会)に使用する。
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Research Products
(7 results)