2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
貴島 祐治 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60192556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高牟禮 逸朗 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (90179557)
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Keywords | イネ / ヘテロシス / マイクロアレイ / 葯 / 反復配列 |
Research Abstract |
本研究では穂ばらみ期の葯と葉を材料とし、イネゲノム内に含まれる反復配列を搭載したマイクロアレイを用いて網羅的発現解析を行い、交雑におけるゲノム全体の変化を特徴化できないか検討した。異種ゲノムが会合した時の反復配列や反復配列を生み出す原動力となる転移因子の発現パターンを調査することで、従来にない視点からヘテロシスや雑種不稔などF1雑種に特有の現象を理解できる可能性があると思われる。 穂ばらみ期の葯と止葉では日本晴とT65およびF1(相反の組合せを含む)の4系統間で発現に差のある因子の総数は両組織の間で大きな違いが見られた。発現に差のあった因子は止葉で2500、葯で11572とおよそ4.6倍の差があった。発現に差のある因子を遺伝子、転移因子、反復配列(RS, repetitive sequence)などに分類したところ、止葉と葯のいずれもMITEsと遺伝子の割合が多く、全ての発現に差の見られた因子の80 %以上を占めた。DNA transposonsは葯の方が発現に差のあった因子の割合が多く(止葉では3.56 %、葯では10.38 %)、Unclassified RSsはその逆であった(止葉では6.28 %、葯では2.29 %)。その他の因子についてはCentromere-related RSsを除いて、止葉と比較して葯での発現に差の見られる因子が多かった。発現に差のあった全ての因子の中でMPH < 0の因子は止葉で86 %であるのに対し、葯では99 %であった。このことから、生殖器官である葯ではより多くの因子の発現がF1で低下することが考えられた。以上の結果より、F1では反復配列の発現が親系統と比較して低下する傾向があること、特に生殖器官である葯で顕著であることが示された。 MPH (midparent heterosis):親系統とF1との比較の指標、平均親ヘテロシス。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネのヘテロシスに関して形質の指標とゲノム指標の作成を目標に研究を行ってきた。形質指標に関しては、従来行われたイネのF1種子に比べ、交雑組み合わせや系統数を大幅に増やし、日本晴に対して、コシヒカリ、Taichung 65 (T65)、キタアケ、黒色稲2号(A58)、インディカ系統のIR36、Kasalath、Peiku (#108)、アジア栽培稲の近縁野生種(O. rufipogon)であるW107、W593、W630、アフリカの栽培稲(O. glaberrima)であるWK18、WK21を交配に用いた。組合せは日本晴を基準親として、他の11系統を対応させ、全て相反交雑をした。これら20組み合わせのF1種子を3反復以上で試験することにより、高い精度でイネにおける全体的なヘテロシスの評価を行った。形質調査には、ヘテロシスが現れやすいと言われているF1種子の形質調査を実施し、胚サイズ、種子重量および発芽能について検討した。胚のサイズには交雑の組合せによってヘテロシスが現れ、母性効果と関連している可能性が指摘できた。イネ属内における種間交雑において、インプリンティングが関与した胚乳の発達不良により種子重量が低下することが示唆できた。発芽後3日間シュート長を測定したところ複数の組合せにおいてヘテロシスが確認でき、特に日本晴を雌親としインディカ系統とO. rufipogonおよびO. glaberrimaを雄親とした組合せでは、2日目から3日目のシュートの成長がヘテロシスに対応していることが分かった。ゲノム指標としては、F1個体の葯の反復配列の発現が親に比べて低下することが判明した。以上の結果は、従来のアプローチでは得られない結果であり、本研究の独自の切り口によって明らかになった。研究開始以前の予想とは異なる結論が得られたことも興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、雑種個体の葯での反復配列の発現解析を進め、それらの発現低下とヘテロシスの関係をより明確にすることを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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