2011 Fiscal Year Research-status Report
イネのマイクロRNA遺伝子転写機構の解明とその人工miRNA発現への利用
Project/Area Number |
23658006
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 豊 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (40345872)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | miRNA / イネ / DNA依存的RNA合成酵素 |
Research Abstract |
microRNA (miRNA)をはじめとする小分子RNAは特定の遺伝子発現を抑制する技術として医療や研究など様々な場面で利用されている。一方、植物育種など農学分野での積極的な利用はその効果が不安定なため基礎・応用の両面において立ち後れている。効果が不安定な理由は今のところ不明である。従来miRNA遺伝子はRNA合成酵素pol IIにより転写されると信じられてきたが、申請者はイネの大部分のmiRNAが植物に特有のRNA合成酵素pol Vに転写されることを見いだした(図1)。このことは、miRNA遺伝子の想定されていた転写機構が間違っていたことを意味する。本研究は植物miRNA遺伝子転写機構を明らかにし、安定的な人工miRNAの発現系を構築することを目的とする。具体的には以下の実験を行った。⑴イネのpolV遺伝子ノックダウン系統においてmiRNA遺伝子の転写が減少している事はこれまでに明らかにしていたが、今年度はマイクロアレー解析によりmiRNA遺伝子以外の影響を明らかにした。その結果、細胞周期関連遺伝子など、多数の遺伝子発現が変化している事を見いだした。(2)イネに6種ある植物特異的DNA依存的RNA合成酵素遺伝子のノックダウン系統において、miRNA遺伝子の転写量に影響がある系統とそうでない系統の間に、細胞増殖速度に差がある事が明らかになった。この事から、miRNAの転写は細胞増殖と関連している事が強く示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに行った実験から、miRNA前駆体の転写に関わる新たなメカニズムとして細胞増殖との関連を見いだす事ができた。また、イネゲノムがコードするpolIV/polVのlargest subunitならびにsecond largest subunitのうち、NRPD2a, NRPD2b, NRPE1bが細胞増殖の正の制御因子として働いており、これらのノックダウン系統では細胞増殖速度の低下とmiRNA前駆体転写の低下が同時に起こっている事を示した。このように、当初の計画にあった通り、miRNA前駆体遺伝子の転写機構に関して、これまで知られていなかった新たな制御系の存在を示唆する事ができた。一方で、転写されるmiRNA遺伝子前駆体の構造解析など方法論的な難しさから思ったように研究が進められなかった実験があり、今後の工夫と対応が必要な計画もあった。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに行った実験から、miRNA前駆体の転写に関わる新たなメカニズムとして細胞増殖との関連を見いだす事ができた。このように、miRNA前駆体遺伝子の転写機構に関して、これまで知られていなかった新たな制御系の存在を示唆する事ができたので、今後は、どうしてネゲノムがコードするpolIV/polVのlargest subunitならびにsecond largest subunitのうち、NRPD2a, NRPD2b, NRPE1bが細胞増殖に影響を及ぼしているのかを明らかにする。さらに、細胞増殖速度がなぜmiRNA前駆体遺伝子の転写を制御出来るのかも解析する。さらに、miRNA前駆体遺伝子の構造解析もおこない、従来考えられていたCAP構造並びにpolyAを持つ前駆体が一般的な転写物なのかそれともそうでないのかを明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は23年度に未使用となった約40万円に加え当初使用予定の110万円を加えた150万円を本研究の推進に使用する予定である。40万円の未使用分は試薬代やスライドグラスの割引などによりマイクロアレー解析費を大幅に安く実験を行う事ができた事と、当初3反復の実験により統計的に有意な遺伝子発現の差を検出する予定であったが、統計処理をするまでもなく2回の反復だけで細胞周期との関わりを示すデータを取る事ができたために実験そのものを繰り越す事となった。しかしながら、24年度にはもう一度統計処理に必要な実験を繰り返す必要があるためにこれらは繰り越した分の研究費で24年度に実験する事となった。残りの110万円は当初計画通りに使用する。
|