2011 Fiscal Year Research-status Report
B染色体の同祖染色体対合誘発作用を利用した異種有用遺伝子のパンコムギへの導入
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23658009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 隆 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60068830)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 染色体対合 |
Research Abstract |
同祖染色体対合は、減数分裂における異種染色体間の対合であり、パンコムギの育種においては近縁異種から有用遺伝子を導入する際に必要とされる重要な現象である。配偶子形成過程で不分離を起こして数を増すB 染色体は、同祖染色体対合をも誘発することが示唆されてきたが、その程度や関与するB 染色体領域は未だ解明されていない。パンコムギには固有のB 染色体は存在しないが、ライムギのB 染色体が導入されており、申請者はライムギB 染色体を分断してパンコムギに導入することに成功している。本研究では、(1)ライムギB 染色体がパンコムギにおいて育種目的に利用できる程度の同祖染色体対合を誘発するか、(2)同祖染色体対合に関与するB 染色体領域はどこかを明らかにする。 平成23 年度には、「ライムギB 染色体添加パンコムギ系統(2n=42+B")x ライムギ1R 染色体置換パンコムギ系統(2n=42, 1R"(1B))」及び 「パンコムギ純系(2n=42)x ライムギ1R 染色体置換パンコムギ系統(2n=42,1R"(1B))」の交配を行なった。また、「ライムギB 染色体添加パンコムギ系統(2n=42+B")x Aegilops variablis」、「ライムギB 染色体断片パンコムギ系統(B-9)x Aegilops variablis」、「ライムギB 染色体断片パンコムギ系統(B-10)x Aegilops variablis」、「パンコムギ純系(2n=42)x Aegilops variablis」の交配を行った。 上記のAegilops variablisとの交配で得た雑種個体を温室で栽培して、減数分裂の調査を行なった。その結果、ライムギB 染色体の動原体領域も末端領域も、有意に同祖染色体対合を誘発する効果があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していた実験の内、「4) ライムギ1R 染色体特異的な34PCR マーカー(Gyawali et al. 2009, 2010)を入手し、ライムギB 染色体ではPCR で増幅しないことを確認し、1R両端と中央のマーカーを選抜する。」は実施しなかった。その代わりに、平成24年度実施予定の「5) 平成23 年度の2)で染色体構成を確認した個体の減数分裂における染色体対合をFISH/GISHで調査する。」を、温室で雑種植物を栽培することにより実施した。これは、ライムギB 染色体にパンコムギにおける同祖染色体対合を誘発する効果があることを証明することが本研究においては最優先課題であり、そのことが証明されなければ、平成24年度に予定しているライムギ1R 染色体とパンコムギ1B 染色体の間での乗換えの実験は無意味になると判断したためである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度にB 染色体にパンコムギにおける同祖染色体対合を誘発する効果があることが証明されたので、平成24年度には、平成23年度に実施しなかった「4) ライムギ1R 染色体特異的な34PCR マーカー(Gyawali et al. 2009, 2010)を入手し、ライムギB 染色体ではPCR で増幅しないことを確認し、1R両端と中央のマーカーを選抜する。」も含めて、ライムギ1R 染色体とパンコムギ1B 染色体の間での乗換えの実験を予定通り遂行する。平成23年度には、PCR実験を行なわなかったので、その試薬代等を大量に購入をする必要がなかったので、翌年度に研究費の一部を持ち越した。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、ライムギ1R 染色体とパンコムギ1B 染色体の雑種のFISH/GISH染色体観察及び雑種子孫のPCR分析を行なう。これらの実験のための試薬等は当初予定よりも高額になるので、平成23年度から持ち越した研究費と平成24年度に請求する研究費合わせて実施する。
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Research Products
(2 results)