2011 Fiscal Year Research-status Report
受粉と収量から見た温暖化条件において最適なイネの穂の位置
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23658015
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松井 勤 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70238939)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 高温不稔 / 受粉 / 群落 / 温暖化 / イネ |
Research Abstract |
高温による不稔が頻発する長江大学の実験圃場において,イネハイブリッド品種II優0293の群落を作成し,群落中にポット栽培したイネ品種タカナリを,種々に高さを違えて配置し開花させ,群落内の穂の高さと受粉・受精との関係を検討した.群落内では表層から40cmの深さまで,深くなるほど気温は低く,湿度は高く,風速は小さかった.高温不稔の発生に直接かかわるとされる花の温度は,群落表層より40cmの位置で,それよりも高い位置の花の温度よりも有意に低かった.それにもかかわらず,表層より40cmの位置で開花した花の受精率は,表層から20cmまでの高さで開花した花の受精率よりも有意に低かった.不稔の発生率と柱頭上で発芽した花粉の数が10粒未満であった花の割合との間には有意な相関関係が認められ,柱頭上での花粉の発芽数の減少が不稔の発生に強く関わっていると考えられた.さらに,発芽花粉数と柱頭に付着する花粉数との間には強い相関関係が認められ.不安定な受粉が群落の深さ40cmにおける不稔の増加に関わっていると考えられた.同様に観察された群落の深さ30cmにおける不稔の増加,不安定な受粉は,開花時に花に振動を与えることで回復した.この結果から,群落の深い位置における受粉・稔実の不良は,風による穂の振動が少ないことによると考えられた.近年,中国では,群落の光合成効率を高めるために穂の位置を低くする改良が効果を挙げ,世界的に注目されている.しかしながら,本研究の結果は,このような改良がイネの受粉を不安定にし,収量に負の影響を与える可能性があることを示す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,長江大学において圃場実験を実施し,データを得ることができ,さらに,得られたデータにより,稔実・受粉の安定性が,穂の位置(深さ)の影響を強く受けることを示す事ができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度のモデル実験により,穂の高さと稔実・受粉の安定性との関係を明確にすることができた.本年度は,単に同様の実験を繰り返すだけでなく,品種や栽培の違いによる草型の違いが受精や受粉に与える影響についても検討を加える.これにより,ポットで栽培した材料を用いた昨年度のモデル実験の結果を一気に実用レベルで検証することができる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中国湖北省における圃場試験を継続するために,旅費として70万円を使用する.その他に,ピンセット,ガラス器具等の消耗品の補給に10万円を使用する.
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