2012 Fiscal Year Research-status Report
銀ナノ微粒子を利用した切り花・花木の新たなポストハーベスト技術の確立
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23658022
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
村山 秀樹 山形大学, 農学部, 教授 (40230015)
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Keywords | 銀ナノ微粒子 / 抗菌性 / 切り花 / 鮮度保持 |
Research Abstract |
前年度の試験において,花器への銀ナノ微粒子コーティング処理が生け水中の細菌の増殖を抑え,切り花の鮮度保持に有効であることが判明した。本年度は,鑑賞花木として人気のある切り枝ケイオウザクラを供試し,銀ナノ微粒子の抗菌効果を調べるとともに,生け水中への銀の溶出について調査した。 実験には,山形大学農学部附属やまがたフィールド科学センター植栽の啓翁桜を供試した。花器として銀ナノ微粒子をコーティングした200ml容プラスチック製容器を用い(NSC),非コーティングのものを対照とした。また,それぞれの区にスクロースを添加した区も設けた。収穫した切り枝は,温度20℃,相対湿度30-40%,12時間日長の条件下においた。その結果,生け水の生菌数は,対照区で10の6乗CFU/mlまで増加したのに対して,NSC処理区では菌の増殖は認められず,銀ナノ微粒子が高い抗菌性を示すことを確認した。新鮮重と吸水量は,10日までは処理区間で差が認められなかったが,その後NSCのスクロース処理区(NSC+Suc区)で高い値を示した。このことから,切り枝ケイオウザクラにおいても,銀ナノ微粒子をコーティングした花器を用いることにより,生け水中の細菌増殖が抑えられこと,さらに糖を添加することで切り枝の新鮮重や吸水量が維持されることが判明した。 次に,銀ナノ微粒子をコーティングしたポリ容器中の銀濃度を経時に測定した。その結果,1日目から14日目にかけて時間の経過とともに銀濃度が上昇することが判明した。測定された銀濃度は,3.66-5.94mg・L-1の範囲であり,これは,切り花を用いたこれまでの研究で処理されている銀ナノ微粒子の量と比較すると,かなり低い濃度であった。NSC区で細菌の増殖がまったく確認されなかったことから,より低濃度で高い抗菌性を有しているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,銀ナノ微粒子をコーティングした花器が切り枝ケイオウザクラの鮮度保持におよぼす影響を調べるとともに,リターナブル資材に銀ナノ微粒子をコーティングし,その効果を調査する予定であった。実際には,リターナブル資材の研究は実施できなかったが,ケイオウザクラにおいて,花器への銀ナノ微粒子のコーティング処理が,生け水中の細菌の増殖を抑え,切り枝の新鮮重や吸水量を高い値で維持することができることを明らかにしたことから,研究はおおむね順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに実施できなかった銀ナノ微粒子をコーティングした花器がエチレン感受性の高い切り花の鮮度保持におよぼす影響を調べるとともに,リターナブル資材に銀ナノ微粒子をコーティングし,その効果を調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度実施する研究の物品費と,研究成果を発表するための旅費として使用する。
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Research Products
(3 results)