2011 Fiscal Year Research-status Report
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23658029
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
平塚 伸 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10143265)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ウンシュウミカン / 果皮の光合成 / PEPC / 糖含量 |
Research Abstract |
6~11月の果実を用い、果皮で固定された14CO2の果汁への分配の季節的変化を明らかにした。分配量のピークは8月と10月に認められ、それぞれ有機酸と糖の蓄積期に一致したことから、果皮で固定されたCO2は両有機物の合成に寄与していると推察した。また、10月の果汁中のスクロース、グルコースおよびフルクトースには14Cが取り込まれていることを証明し、これらの結果を平成24年3月の園芸学会で公表した。なお、14Cの糖への取り込みは、暗黒状態で固定させた際にも認められたことより、PEPCのCO2固定によって生成された有機酸が、PEPCKの触媒作用を通じて糖合成(糖新生)方向に向いている可能性を示した。さらに、8月と10月の果実においては、暗黒で14CO2固定後に光照射すると果汁中のグルコースとスクロースへの14Cの取り込みが増加したことより、果実にはC4光合成回路が備わっている可能性も示された。 厚いワックスで覆われている果皮が、実際にCO2固定することができるかについて、果実の発育に伴う果皮の気孔コンダクタンスを知る目的で蒸散量を追跡調査した。蒸散量は8月にピーク(0.75mg H2O/cm2/min)を示し、その後徐々に低下するものの、11月以降も0.2 mg前後の値を示し、発育期間を通してCO2固定が可能なことを明らかにした(上記園芸学会で公表)。一方、走査型電顕を用いた果皮表面の気孔観察を行い、幼果では葉と同程度の気孔が存在し、果実肥大に伴って密度は低下するものの、10月頃までは形態的に完全な気孔であることを明らかにした(未発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
果実の発育期間中において、果皮で固定された14CO2の果汁への分配の季節的変化を明らかにした。分配量のピークは8月と10月に認められ、それぞれ有機酸と糖の蓄積期に一致したことから、両有機物の合成に寄与していると推察した。また、10月の果汁中の糖に14Cが取り込まれていることを証明し、これらの結果は平成24年3月の園芸学会で公表した。なお、14Cの糖への取り込みは、暗黒状態で果実に14CO2固定させた際にも認められたことより、PEPCのCO2固定によって生成された有機酸が、PEPCKの触媒作用によって糖合成(糖新生)方向に向いている可能性が示唆された。これらの結果の一部は、J.Amer.Soc.Hort.Sci.に印刷中である。
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Strategy for Future Research Activity |
果皮が光合成およびPEPCによってCO2固定すること、および、それら固定産物が果汁へ分配されることの概要は、ほぼ把握できた。一方、8月と10月の果実を暗黒で14CO2固定させた後に光照射すると、果汁中の糖度が上昇した。これは、果実にC4光合成回路が備わっている可能性を示す。C4回路は果皮に備わっていると考えられるため、今後果皮中の有機酸への14Cの取り込みを解析し、C4回路の存在を証明する。また、果肉内ではPEPCKの触媒による糖新生が生じている可能性が示されたため、PEPCKの解析法を確立し、ウンシュウミカン果肉内で糖新生が生じているかを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として生化学試薬、RI試薬およびデイスポーザブル器具などの物品費に充てる。なお、実験補助費、成果公表旅費、論文投稿費についても計上する。 前年度に約24,000円の経費を残したが、これは本年度に生化学試薬を多量に使う実験を計画していたためである。
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Research Products
(2 results)