2012 Fiscal Year Research-status Report
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23658029
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
平塚 伸 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10143265)
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Keywords | 果実 / CO2固定 / 糖濃度 / 光合成 / PEPC |
Research Abstract |
ウンシュウミカン果皮の気孔は果頂部と赤道部に多く、特に満開63日後(7月中旬)の気孔密度はカボチャ葉の裏面と同程度の300個/mm2程度認められた。果実肥大に伴ってその密度は減少したが、密度変化と一定面積当たりの果皮からの蒸散速度変化はほぼ一致した。電顕で観察した気孔形態は、幼果では完全なのに対し、果実成熟に伴って異常や崩壊が認められた。しかし、蒸散は成熟期でも幼果の1/3程度行われていたことより、気孔を介したCO2の取り込みは成熟果でも可能と考えられた。 果汁への14Cの取り込みは8月中旬がピークとなり、その後10月中旬に小さなピークが認められた。なお、8月中旬の取り込みピークは光照射果実と暗黒下果実で同程度となったことより、果汁に蓄積する炭素はPEPCによって固定されたものと推察された。 果汁成分を液体クロマトグラフで分離し、糖への14Cの取り込みを調査した結果、9月の光照射果実ではフルクトース、グルコース、および、スクロースでほぼ同量が確認された。また、同時期の暗黒下果実の糖でも光照射果実と同程度の14Cが検出されたことより、光照射果実の果汁の14Cは果皮の光合成産物ではないと考えられた。さらに、暗黒下で14C固定させてその後光照射した果実でも14Cの糖への取り込みに変化がなかったことより、C4-ジカルボン酸回路は稼働していないと判断された。一方、果皮の有機酸に多量の14Cが検出されたことより、果皮のPEPCによって固定されたCO2がリンゴ酸に付加され、 リンゴ酸―>(クエン酸)―>PEP―>フルクトースー>グルコースー>スクロース と代謝される糖新生のメカニズムが働いている可能性がある。但し、10月の果実では、暗黒で14CO2固定後に光照射した果実で糖への取り込みが他より高かったことから、C4-ジカルボン酸回路やCAM型光合成の関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幾つかのトラブルが生じた時期があったものの、果実発育に伴う果皮表面の気孔の観察やその機能の推定ができた。また、果皮で固定された14Cが果汁の各主要糖へ分配され、14Cの糖への取り込みは暗黒下でも生じることを明らかにできたことより、当初計画の80%は達成できていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
14Cがグルコース、フルクトース、および、スクロースに取り込まれることは確認されたが、有機酸への取り込みがリンゴ酸なのかクエン酸なのか証明できていない。もしクエン酸へ取り込まれるとしたら、PEPCによってリンゴ酸に付加した14Cが速やかにカンキツの主要酸であるクエン酸に代謝されることとなり、生理学上重要な発見に繋がる可能性がある。 また、本年度に明確にできなかった各発育ステージ果実における14Cの各組織への分布について、さらに解析を進める予定である。一方、初期レベルの果皮光合成特性を明らかにするため、果皮切片への14CO2パルス実験を行い、14Cがリンゴ酸やアスパラギン酸などのC4-ジカルボン酸にどの程度取り込まれるかについて、葉およびC4植物のトウモロコシと比較する計画を立てている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は同化箱を更新して使用できなかった期間があったことより、幾つかの実験が遂行できなかった。従って次年度研究費は、主としてこれら実験を補完するためのアイソトープ試薬や化学薬品代に充てる予定である。また、実験補助費と成果発表旅費も計上する。なお、現在HPLC分析でRI検出器を用いているが、有機酸に対する検出感度が低くて同定するのに困難であるため、廉価なUV検出器の購入も検討している。
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