2012 Fiscal Year Research-status Report
芳香植物の栽培環境による香気ケモタイプの変動とそれがヒトの心理・生理に及ぼす影響
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23658035
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
林 孝洋 近畿大学, 農学部, 教授 (40173009)
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Keywords | 芳香植物 / ケモタイプ / 光質 / 主成分分析 / ラベンダー / 精油 / アロマコロジー / 官能検査 |
Research Abstract |
ラベンダー精油は多くのケモタイプが存在する.ラベンダー精油を主成分分析によって類似したケモタイプごとに分類することで,精油のアロマコロジー(芳香心理生理学的)効果も分類することができると考えた. 日本の市場で入手できた27種類のラベンダー精油を実験に供試し,GCおよびGC-MS分析を行った.得られた香気成分組成からケモタイプに分類するために,主成分分析を行った.その結果,スコアプロット上の精油の位置関係からラベンダー精油をいくつかのケモタイプに分類できることが明らかになった. 主成分分析の結果とアロマコロジー効果の関連性を検証するために,特徴的なラベンダー精油を選んで官能試験を行った.サンプルとして,ラベンダー精油7種類と対照区(純水)との合計8試験区を設定した.精油は,閾値付近の濃度である100,000倍に希釈した.30分の官能試験の間,被験者の心電図R-R間隔から自律神経活動の変化を測定し,精神的負荷として百ます計算を行わせた.被験者は試験開始10分後から試験終了まで,呈示されたサンプルの香気を嗅いだ.試験前後での被験者のストレスおよび疲労度,気分状態の変化をそれぞれ唾液アミラーゼ濃度の測定,フリッカーテスト, POMS(Profile of Mood State)によって評価した.7種類の精油に対する官能試験の結果,同じ商品名で販売されている精油であっても,得られるアロマコロジー効果が異なることが認められた.精油の中には覚醒効果を持つものもあった.また,性別の違いがアロマコロジー効果に影響を及ぼすことも分かった.自律神経活動と唾液アミラーゼ濃度の測定結果より明らかとなったアロマコロジー効果は,主成分分析で得られたスコアプロット上の精油の位置関係と関連性が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究テーマは大きく2つの実験で構成される.1つは栽培環境によるケモタイプの変動であり,もう1つは得られた複数のケモタイプがヒトの心理生理の及ぼす影響の解明である.H23年度にローマンカモミールを用いて,主として前者の実験を行った.H24年度は,香気成分組成が微妙に異なるケモタイプがヒトの心理生理に及ぼす影響の解析手法の開発に重点を置いた.国際学会での発表に繋がる成果を上げた点は評価できるが,用いた精油は市販のラベンダー精油であった.同じ植物材料でケモタイプの環境変動とそのケモタイプの心理生理に及ぼす影響を解明すべきであるが,実験に必要な精油を確保するには,植物の栽培規模を大きくする必要があり,現有の実験施設ではそれが難しいことが分かった.当初の計画の修正を余儀なくされたが,研究成果は伴っていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として,栽培環境によるケモタイプの変動(実験1)と異なるケモタイプの精油がヒトの心理生理に及ぼす影響(実験2)を独立して実験を行い,論文にまとめられるよう収束させる.H23年度の光質実験(論文公表済み)とケモタイプがヒトの心理生理の及ぼす実験(国際学会発表済み)をさらに発展させ,次の基盤研究へと展開する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は,GC分析用のSPMEとPOMS試験紙,アミラーゼ分析用チップ等の消耗品で250,000円,官能検査の被験者への謝金等で200,000万円,論文校閲に50,000円を予定している.
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Research Products
(2 results)