2011 Fiscal Year Research-status Report
病原性因子を標的としたファイトプラズマ病の新規治療薬の開発
Project/Area Number |
23658039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
難波 成任 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50189221)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ファイトプラズマ / 病原性因子 |
Research Abstract |
ファイトプラズマ(Phytoplasma asteris)は植物の篩部細胞内に寄生する病原細菌である。ファイトプラズマ病には特効薬が無く、また抵抗性品種も知られていないため、有効な防除法が切望されている。最近、申請者らの研究によりファイトプラズマの病原性因子「TENGU」が明らかとなった。TENGUは低分子ペプチド性物質であり、ファイトプラズマから植物中に分泌され、植物に形態異常を引き起こす。本研究ではファイトプラズマの病原性因子のうち特にTENGUを標的とし、その機能を阻害する低分子化合物を探索することで、ファイトプラズマ病に対する新規治療薬剤を得ることを目的とする。H23年度は、TENGUの機能を明らかにする一環として、TENGUがサプレッサー活性を持つかどうかについて解析した。一般にRNAサイレンシングの抑制因子(サプレッサー)の多くは、植物に形態異常を引き起こすことが知られている。GFPと病原性因子を同時に植物体で発現させ、GFP蛍光が消失するか否かを指標としてサプレッサー活性を解析した。その結果、TENGUを発現させた場合にはGFP蛍光が消失した一方で、典型的なサプレッサーであるP19を発現させた場合には、GFP蛍光が保持されていた。従って、TENGUはRNAサイレンシングサプレッサー活性を持たないことが示唆され、RNAサイレンシングとは異なる経路によって植物に形態異常を引き起こすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来真核生物の遺伝子発現制御は転写因子等による転写レベルの発現制御が司ると考えられてきた。しかし、近年RNAサイレンシングにより生ずるmiRNA等の小分子RNAを介した転写後の遺伝子発現制御が重要な役割を果たすことが明らかにされており、植物の形態形成の制御にもRNAサイレンシングが深く関与することが明らかにされつつある。例えば植物ウイルスがコードする一部のRNAサイレンシングサプレッサーが形態異常を誘導することが明らかにされている。そこで萎縮・叢生を誘導するファイトプラズマの病原性因子TENGUのRNAサイレンシングサプレッサー活性を解析した結果、TENGUはサプレッサー活性を有さないことが明らかとなった。これはTENGUがmiRNA等の小分子RNAを介さずに植物の形態形成の制御に働きかけることを示唆しており、機能を特定する上で重要な知見であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで我々は、病原性因子TENGUを発現する形質転換植物における植物遺伝子発現変動を解析し、天狗巣症状の誘導に伴って植物ホルモンであるオーキシンの作用が抑制されることを明らかにしている。H23年度に得られた知見を合わせて考えると、病原性因子であるTENGUの発現から病徴発現に至るまでのプロセスにおいて、病原性因子と相互作用して病原性発現シグナルの移行サポートする因子や病原性因子と相互作用する受容体の存在が予想される。今後は、病原性因子としての活性に重要な部位に焦点を当て、解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費は、基本的には実験のための消耗品の購入に充てる予定である。高額な機器の購入予定は無い。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Cloning, expression analysis, and sequence diversity of genes encoding two different immunodominant membrane proteins in poinsettia branch-inducing phytoplasma (PoiBI).2011
Author(s)
Neriya, Y., Sugawara, K., Maejima, K., Hashimoto, M., Komatsu, K., Minato, N., Miura, C., Kakizawa, S., Yamaji, Y., Oshima, K., and Namba, S.
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Journal Title
FEMS Microbiol. Lett.
Volume: 324
Pages: 38-47
Peer Reviewed
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[Journal Article] Unique morphological changes in plant pathogenic phytoplasma-infected petunia flowers are related to transcriptional regulation of floral homeotic genes in an organ-specific manner.2011
Author(s)
Himeno, M., Neriya, Y., Minato, N., Miura, C., Sugawara, K., Ishii, Y., Yamaji, Y., Kakizawa, S., Oshima, K., and Namba, S.
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Journal Title
Plant J.
Volume: 67
Pages: 971-979
Peer Reviewed
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[Journal Article] Dramatic transcriptional changes in an intracellular parasite enable host switching between plant and insect.2011
Author(s)
Oshima, K., Ishii, Y., Kakizawa, S., Sugawara, K., Neriya, Y., Himeno, M., Minato, N., Miura, C., Shiraishi, T., Yamaji, Y., and Namba, S.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 6
Pages: e23242
Peer Reviewed
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[Journal Article] The groEL gene as an additional marker for finer differentiation of 'Candidatus Phytoplasma asteris'-related strains.2011
Author(s)
Mitrovic, J., Kakizawa, S., Duduk, B., Oshima, K., Namba, S., and Bertaccini, A.
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Journal Title
Ann. Appl. Biol.
Volume: 159
Pages: 41-48
Peer Reviewed
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