2012 Fiscal Year Research-status Report
Cryトキシンのクリスタル形成機構を利用する画期的なタンパク質生産技術の開発
Project/Area Number |
23658048
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
早川 徹 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (30313555)
|
Keywords | タンパク質生産 / ペプチドタグ / 凝集体形成 / Cry4Aa / Bacillus thuringiensis / 大腸菌 / シスタチンC / フェリチン |
Research Abstract |
殺蚊トキシンCry4AaのC末端領域に由来するポリペプチド、4AaCter(Ile696~Pro851)及び4AaB7(F802~E834)と連結したタンパク質は大腸菌で凝集体として発現・蓄積される。タンパク質を凝集体として生産する方法は、既存の方法で調製が難しいタンパク質を大量生産するのに利用できると期待される。ペプチドタグ4AaCter及び4AaB7を利用する画期的なタンパク質生産技術を開発するため、本年度は以下の2点について研究を進めた。 4AaCterを用いたシスタチンC(Cys C、腎機能マーカー)の効率的生産:Cys Cをコードする人工遺伝子(cys C-S1)を合成し、発現ベクター(p4AaCter)を利用した生産を試みた。4AaCterを融合することでCys Cの発現量は大幅に上昇し、簡単な精製操作で大量のタンパク質(7.1±1.1 mg/L culture, 純度87±5 %)が生産できた。組換えCys Cは高度な免疫原性と免疫反応性を備えていた(Hayashi et al., 2013)。本システムは抗原としてのCys Cの生産に適しており、生産コストも大幅に圧縮できることが示唆された。 4AaB7を用いた新規発現ベクターの構築:4AaB7融合タンパク質を発現させるための発現ベクター(pHB7, pHB7PP, pB7H, pB7PPH, pB7HN)を構築した。発現ベクターで用いたペプチドタグは、Hisタグ(H)及び4AaB7タグ(B7)、HRV3Cプロテアーゼ(PP)などを組み合わせて作製した。これらを用いてCys C、もしくはフェリチン(腫瘍マーカー)の生産を試みた結果、4AaB7との融合は発現量の上昇を促すことが示された。しかし4AaB7自体の再凝集性が強く、精製過程でのロスが非常に多くなった。現在、タグの改良及び、使用法について検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はペプチドタグ4AaCterを利用してシスタチンC(腎機能マーカー)の効率的生産システムを構築した。これは梅毒菌表面抗原(TpN)の生産に次ぐ2例目の成功例であり、4AaCterタグを用いて臨床診断薬に用いる抗原タンパク質が効率的に生産できることが示されつつある。一方、4AaB7タグについても構造の異なる様々な発現ベクターを構築することができた。構築した発現ベクターを利用してシスタチンCやフェリチンなどの生産を試みた結果、4AaCterタグを利用した場合と同様に4AaB7との融合も抗原タンパク質の発現量を大幅な上昇させることが明らかになった。しかし4AaB7タグ自体が非常に高い凝集活性を示し、尿素を除去する透析の過程で、発現タンパク質が再凝集する問題が明らかになった。現在はペプチドタグ配列の改変による再凝集活性の抑制、及び4AaB7タグを別の利用法について検討を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度も継続して発現用ペプチドタグ(特に4AaB7タグを基にしたペプチドタグ)の試作とそれを利用した発現ベクターの構築を進める。 ペプチドタグ4AaCter及び4AaB7を抗原以外のタンパク質生産で利用する方法を模索する。例えば、4AaCterを可溶性トキシンの製剤化に利用する方法の開発や4AaCterもしくは4AaB7で作られた凝集体の表面に抗原タンパク質を提示させる方法を開発する。表面に抗原タンパク質を提示させた粒子は効率的抗体作製のためのアジュバントとして利用することを考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
4AaCterを利用するタンパク質生産の構築と有効性の検証については順調であるものの、4AaB7を利用するシステムについては、その高い再凝集活性により有効なシステムが確立できていない。次年度は変異の導入による再凝集活性の抑制を試みるほか、凝集体をアジュバントとして利用するなど、新規な利用法についても検討する。
|