2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658050
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小林 淳 山口大学, 農学部, 教授 (70242930)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門野 敬子 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫ゲノム研究ユニット, 上級研究員 (40355722)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | Bombyx mandarina / pupal duration / DNA marker / bet hedging |
Research Abstract |
1. PCR分析用DNAマーカーの選定:雑種系統(#18-11)とカイコ(大造)の28本の染色体を識別するためのPCR用DNAマーカーの選定を行い、15本(第1(Z), 2, 4, 10, 11, 13, 14, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22および26染色体)に対してはDNAマーカーを見つけることができた。2. 雑種系統とカイコ(大造)の交雑F1における蛹期間ならびにゲノムDNA解析:雑種系統(#18-10、18-11および18-12)とカイコ(大造)の正逆交雑F1の蛹期間を調査した結果、いずれの系統を用いたF1においても、雑種系統を母親としたF1雌だけが長くばらついた蛹期間を示した。この結果は、クワコとカイコの正逆交雑F1と同じであることから、雑種系統の蛹期間のばらつきもクワコ同様、Z染色体と常染色体の相互作用により決定されていることが判明した。なお、F1雌に雑種系統雄の戻し交雑を行い、次年度に蛹期間の分離を調べるためのBC1の休眠卵を得ることに成功した。3. 雑種系統の選抜にともなう遺伝子頻度と組み合わせの変動解析:カイコとクワコの雑種系統のF7世代の蛹期間を調査した結果、蛹期間の長い雌雄同士の交雑・選抜してきた3系統(#18-10、18-11および18-12)では,F6世代同様、20~100日前後の一様にばらついた蛹期間を示し、均一で長い蛹期間に収束する傾向は認められなかった。一方,選抜途中(F4)に蛹期間の短い個体の選抜に切り替えた系統(#18-1)では、20日前後の比較的均一な蛹期間を示したが,30日を超える個体もわずかながら現れた。これらの結果から、雑種系統の蛹期間は、少なくとも蛹期間をばらつかせる遺伝子とその度合いを調節する遺伝子の少なくとも2種類の遺伝子群により支配されている可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は,カイコとクワコの6年間の交雑育種により得られた長い蛹期間(最長200日以上)を有する雑種系統を出発材料として,世界初のカイコ休眠蛹基盤系統を確立するとともに,蛹期間の調節に関わる遺伝子群のゲノム上の位置と候補遺伝子配列を同定し,遺伝的メカニズムを解明することである。現在までに、蛹期間の長い雑種系統の選抜・維持とゲノム解読されたカイコ品種大造との交配実験は計画通り進展しており、蛹期間調節に関与する遺伝的メカニズムの解明に必要な染色体ごとのDNAマーカーも着実に選定作業が進行しているので、おおむね順調と判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)PCR分析用DNAマーカーの選定:蛹発育調節および休眠進化に関連する遺伝子群を同定するために,雑種系統(#18-11)とカイコ(大造)の28本の染色体を識別可能なDNAマーカーのうち、未同定の13本の染色体に対するDNAマーカーを選定し、さらにその近傍の配列をデータベースから随時選定し,その配列情報に基づいて新たなPCRプライマーを作製する。(2)雑種系統とカイコ(大造)の戻し交雑BC1における蛹期間ならびにゲノムDNA解析:23年度準備した大造と雑種系統の正逆交雑F1に由来するBC1の蛹期間を調べ,蛹発育調節遺伝子群の遺伝様式を確認するとともに,ゲノムDNA解析を行い,前年度の両親の解析結果から予想されるDNAマーカーの分離を検証し,長い蛹期間と高い相関を示すDNAマーカーの有無およびそれらの組み合わせと蛹期間の関係を解析する。(3)雑種系統の選抜にともなう遺伝子頻度と組み合わせの変動解析:24年度の雑種系統の成虫のゲノムDNA解析を行い、21~22年度の世代で同定された各蛹発育調節遺伝子の候補およびそれらの組み合わせと蛹期間との関係を再検討し,必要に応じて候補の削除や追加を行う。それに伴い,新たな候補遺伝子の染色体上の位置の特定,配列決定および機能解明を試みる。(4)蛹休眠の進化プロセスの遺伝学的解析:蛹期間選抜系統および大造との雑種のゲノムDNA解析により同定した各蛹発育調節遺伝子の候補およびそれらの組み合わせと蛹発育調節との関係をさらに詳細に分析するとともに、各候補遺伝子の機能を推定し、蛹休眠進化プロセスに関する遺伝的メカニズムの実態を考察する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度の研究費については全て使いきる予定であったが、成果発表のための3月末の学会出席を、仕事の都合により急遽2泊から日帰りに変更したため、本来旅費で使い切るはずの30,620円が次年度繰越となった。次年度は、基本的に支払請求書に記載した使用内訳で研究費を使用し、繰越額については実験の推進に役立てるために主に物品費に加算して使用する予定である。
|