2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658050
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小林 淳 山口大学, 農学部, 教授 (70242930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門野 敬子 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (40355722)
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Keywords | Bomyx mandarina / pupal duration / DNA marker / bet hedging |
Research Abstract |
1. PCR分析用DNAマーカーの選定:雑種系統(#18-11)とカイコ(大造)の28本の染色体を識別するためのPCR用DNAマーカーの選定を行い,28本の染色体を識別可能なプライマー対(第1(Z)~ 4, 8~22および26~28染色体については雑種と大造で異なる長さのPCR産物が増幅可能,第5~7,23~24染色体については大造のみでPCR産物が増幅可能)を選定できた.ただし,第23,27および28番染色体については雑種系統内に変異が認められた. 2. 雑種系統とカイコ(大造)の戻し交雑BC1における蛹期間ならびにゲノムDNA解析:雑種系統(#18-11)とカイコ(大造)の正逆交雑F1♀を用いて作製した戻し交雑BC1の蛹期間を調査した結果、F1♀×大造♂が20日以内と短く均一であった のに対し,F1♀×雑種系統♂が最長100日を越える顕著なバラツキを示したことから,雑種由来劣性遺伝子(群)のホモ接合がバラツキに必要である可能性が示唆された.そこで,選定した28種類のプライマー対を用いてBC1 (F1♀×雑種系統♂) のゲノムDNAをPCR分析したところ,蛹期間30日以上のBC1全てに共通するホモ接合の雑種由来染色体は検出されなかったが,75%以上の個体で雑種ホモ接合を示す染色体 が複数個検出された.また,蛹期間30日以上のBC1♂全てにおいて第11番染色体が雑種ホモ接合であった.これらの結果から,蛹発育調節メカニズムの雌雄差が示唆された. 3. 蛹発育調節に関する遺伝的モデルの構築:BC1 における蛹期間と染色体組成の関係に基づいて,相加的な効果を有する 同義遺伝子 6 個を仮定した蛹発育調節に関する遺伝的モデルを考案できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は,カイコとクワコの6年間の交雑育種により得られた長い蛹期間(最長200日以上)を有する雑種系統を出発材料として,世界初のカイコ休眠蛹基盤系統を確立するとともに,蛹期間の調節に関わる遺伝子群のゲノム上の位置と候補遺伝子配列を同定し,遺伝的メカニズムを解明することである.現在までに、蛹期間の長い雑種系統の選抜・維持とゲノム解読されたカイコ品種大造との交配実験,ならびに,蛹発育調節に関与する遺伝的メカニズムの解明に必要な染色体ごとのDNAマーカーの選定が計画どおり完了し,PCR分析結果に基づいて蛹発育調節の遺伝学的モデルを考案できたので,おおむね順調と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) PCR分析用DNAマーカーの追加と戻し交雑BC1のゲノムDNA解析の再確認:蛹発育調節および休眠進化に関連する遺伝子群を同定するために選定した雑種系統(#18-11)とカイコ (大造)の28本の染色体を識別可能なDNAマーカーのうち,雑種系統内に変異が認められた3本と,大造でのみPCR産物が検出された5本の染色体に対するDNAマーカーについては,確実に雑種を同定できるPCRプライマーに更新し,有望な染色体についてはさらにプライマー数を増やして,BC1の蛹期間を解析することにより,蛹発育調節遺伝子群の遺伝様式および考案した遺伝学的モデルを再確認するとともに,関与する遺伝子候補を推定する. (2) 蛹発育調節の分子メカニズム解明:蛹期間選抜系統および大造との雑種のゲノムDNA解析結果に基づいて推定された各蛹発育調節遺伝子の候補およびそれらの組み合わせと蛹発育調節との関係をさらに詳細に分析し,各候補遺伝子の機能と相互作用に関する分子メカニズムの実態を考察し,本研究課題の成果としてとりまとめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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