2012 Fiscal Year Research-status Report
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23658051
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
吉賀 豊司 佐賀大学, 農学部, 准教授 (00312231)
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Keywords | 病原体 |
Research Abstract |
本研究では、昨年に引続きウイルスを中心に新規線虫病原体を検出するシステムを構築し、それらの単離・同定を行うことを目的として研究を行った。 土壌中から分離した線虫を観察することによって異常を示す個体の探索を行ったところ、現在のところ病原体によると思われる明らかな異常を示す線虫は見つかっていない。現在も継続して観察するとともに、検出方法の改良を試みている。 ベイト法によるウイルスの検出を行うため、C. elegansの無菌培養を行い、野外から採取した線虫の破砕液をフィルター滅菌した後に添加し、昨年度に線虫の尾部が膨らむ現象がみられたが、無菌培地での培養によって脱腸のような状態が引き起こされた結果の可能性が高いことが明らかになった。また、土壌懸濁液中に一定時間接触させたC. elegansをプレート上に移し、形態的変化のみられた個体については、卵巣などに異常がみられたような個体についても次第に回復し、異常が見られなくなった。微生物の感染の有無については、今後、さらに検討する必要がある。ウイルスに対するC. elegansの感受性を高めるため、RNAiの効きにくい変異体rde-1をベイトに用いて、ウイルスのスクリーニングを試みているが、形態的な変化や増殖率が低下するような現象も見られたが、はっきりとした病原体の感染とは判断できず、現在、その原因を検討中である。 これまでカビや植物などで,長鎖二本鎖RNAが検出され、それらが新規のウイルスであることが近年明らかになって来ている。そこで線虫を大量培養し、線虫から核酸を抽出し、長鎖二本鎖RNAの検出を試みた。その結果、1種の線虫から抽出した核酸の中に長鎖二本鎖RNAと思われるバンドを電気泳動で検出できた。他の線虫種や系統ではこのようなバンドは検出されないことから、これは新規のウイルスの可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線虫の形態、行動、生存、増殖のいずれかで異常が観察された線虫について、今のところ病原体かどうかについて結論には至っていないものの、それらの項目を指標に病原体のスクリーニングを行うシステムが大まかに構築できた。一方、生体内には通常は長鎖二本鎖RNAが存在しないことを指標に、大量培養した線虫の一部から長鎖二本鎖RNAが検出され、これはウイルスである可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っているスクリーニング方法をさらに改良しながら、引き続きスクリーニングならびに観察を行い、病原体の単離を行っていく。また、表現型の異常がみられたものについては、病原体の有無を線虫の無菌化と再感染実験によって確認するとともに、顕微鏡下での高倍率での観察によって細胞レベルでの変化の詳細に明らかにしていく。また、病原体による感染による異常と確認できた場合は、その病原体の単離を行ない、遺伝子解析を行ない、病原体の同定を行なう。 線虫から長鎖二本鎖RNAが検出されたことから、同様に他の線虫種からも二本鎖RNAを指標に新規ウイルスを検出できる可能性がある。そこで様々な線虫種や系統を大量培養し、抽出した核酸中の長鎖二本鎖RNAの有無を指標にウイルスの検出を行なうとともに、今回検出された線虫の長鎖二本鎖RNAについて、遺伝子レベルでの解析を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定よりも消耗品費が必要になりそうであったため,消耗品費を抑えながら人件費も抑えたために当該研究費が生じた.翌年度には主に消耗品費として使用する.
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