2012 Fiscal Year Research-status Report
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23658052
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
阿部 誠 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (70414357)
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Keywords | アレチウリ / ウリ科食性昆虫 / トレンチ |
Research Abstract |
アレチウリは通常、植食性昆虫による食害を受けることが少ない。一方で、日照条件の悪い場所に生育するアレチウリがクロウリハムシ成虫に食害を受けていることを見出した。このことから、アレチウリは生育条件、特に光条件の違いによって、ウリ科食性甲虫類による食害抵抗性の程度が変化すると考えられたため、光条件を変えて育成したアレチウリに対するウリ科食性甲虫類の摂食反応について検討した。また、ウリ科食性甲虫(ウリハムシ、クロウリハムシ、トホシテントウ)成虫は、寄主植物葉に円状の切れ目(トレンチ)をつけてから摂食する習性があるため、これら甲虫のアレチウリ葉へのトレンチ行動についても調べた。3種の甲虫にアレチウリの葉片をペトリ皿内で与えた場合、トレンチをつけずに摂食した。3種の甲虫に弱光条件下で生育したアレチウリ葉を植物体から切り離さずに与えた場合、全ての種がトレンチをつけた後に摂食した。一方で、強光条件下で生育させたアレチウリ葉を植物体から切り離さずに与えた場合は、3種ともトレンチをつけたが、摂食量は著しく減少した。弱光下および強光下で生育させたアレチウリの篩管液滲出量に差は認められなかった。以上の結果から、ウリ科食性甲虫3種に対するアレチウリの食害抵抗性には、ウリ科食性甲虫類にトレンチ行動を起こさせる篩管液による防御に加えて、アレチウリの生育条件の変化に伴う生理的要因の変化が関与していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はウリハムシを用いた試験を予定通り実施できた。日照条件の悪い場所に生えているアレチウリがクロウリハムシに食害を受けていることを見出し、本種に加え、クロウリハムシを用いて試験を行うことで、これらのハムシ類が強光条件下で生育させたアレチウリにトレンチ行動を行っても、必ずしも摂食しないことを見出した。このことは、昆虫が滲出してくる篩管液を防御するために行うトレンチ行動では対応できない、別の食害抵抗機能をアレチウリが持つことを示すものであり、きわめて興味深い結果である。この予想外の実験結果が得られたため、当初の予定では篩管液の化学分析を行う予定であったが、この現象の解析を先に検討したために、篩管液の化学分析は平成25年度に実施することとした。すでに分析機器はそろっているため、迅速な分析実験の実施が可能であり、研究の進捗に問題を生じることはない。今回新たな知見が得られたこともあり、研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の結果から、アレチウリの生育条件によって生理的要因が変化し、食害抵抗性要因が変化することが考えられた。このことは、篩管液の物理化学的性質が変化している可能性を示唆するものである。この結果を受けて、平成25年度はアレチウリの生育条件を変えて栽培し、上記昆虫類の食害程度と篩管液の成分組成の関連性を比較検討する。また篩管液以外でも、光条件の違いにより増減する可能性が考えられる葉の成分(ワックス成分、フラボノイド等)に着目して分析を行い、光条件の異なる環境で生育したアレチウリ葉の成分の違いを明らかにする。顕著な違いが確認された成分については、上記甲虫類を用いた摂食試験を行い、アレチウリの生育条件と食害抵抗性に関与する要因を明らかにする。以上により、アレチウリの昆虫に対する食害抵抗性要因の解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度である平成25年度は、平成24年度に実施できなかった篩管液の物理化学的性質に焦点をあてて研究を進める。消耗品として、化学分析に用いる試薬およびHPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析カラム等、昆虫の飼育および植物の栽培に必要な器具類を購入する。また、本研究の成果を英文雑誌および国内学会で発表するために、英文校閲費、雑誌への掲載費、学会参加費および旅費を支出する。
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