2012 Fiscal Year Research-status Report
超近縁菌比較ゲノムによるブラディリゾビウム属細菌の植物共生システムの解明
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23658057
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
南澤 究 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70167667)
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Keywords | 土壌微生物 / 共生 / ゲノム比較 |
Research Abstract |
Cluster IIIの光合成茎粒菌―エンドファイトー非共生土壌細菌の「超近縁株」比較では、まずAgromonas oligotrophica S58株ゲノムを決定し、近縁のクサネムAeschynomene indicaの茎粒・根粒菌であるORS278およびBTAi1株ゲノムとの比較を行ったところ、S58株ゲノムには根粒発達遺伝子(ndv)や窒素固定遺伝子(nif, fix)をほぼ全て保有していた。そこで、クサネムに接種実験を行ったところ、Agromonas oligotrophicaに属する全ての株がクサネムに根粒および茎粒を形成した。GusA標識株・GFP標識株接種実験等によりS58株がクサネムに茎粒・根粒を形成し、バクテロイドに分化することを証明した。S58株ゲノムにはCluster Iダイズ根粒菌のように根粒形成遺伝子(nod gene)や共生アイランドが存在しなかったので、本結果は、未だ不明なNod-factor非依存性の共生システムの解明やその共生進化(進行退化か原始共生か)について大きな一石を投じた。この成果はAEM誌の原著論文とPCP誌の総説に掲載された。 昨年度、Cluster Iに属するUSDA122株のType III分泌系がRj2遺伝型ダイズへの共生不和合性をキャンセルすることを発見した。本年度は分泌タンパク質のSDS-PAGE解析、質量分析、ゲノム比較により、不和合性を誘導する可能性のあるエフェクター候補遺伝子を探索した。共生不和合性のUSDA122株のドラフトゲノム情報から共生和合性のUSDA110ゲノム上のエフェクター遺伝子と相同性があり、数アミノ酸置換を起こしているエフェクター候補遺伝子NopE1などを見いだした。この成果もAEM誌に原著論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Bradyrhizobium属細菌の超近縁菌ゲノム比較による植物共生システムの探索が根粒共生(Cluster I)、茎粒形成(Cluster III)、エンドファイト(Cluster II)でいずれも進み、学術的に非常に興味深い知見が得られつつある。 根粒共生(Cluster I)では、Rj2遺伝型ダイズHardeeに共生不和合性を示すUSDA122株に特異的なエフェクターを探索するためにフラボノイド添加・無添加の分泌タンパクを解析し、USDA110株およびUSDA122株のゲノム情報から得られる遺伝子の探索を行った。その結果、共生不和合性のUSDA122株のドラフトゲノム情報から共生和合性のUSDA110ゲノム上のエフェクター遺伝子と相同性があり、数アミノ酸置換を起こしているエフェクター候補遺伝子NopE1などを見いだした。宿主側のRj2遺伝子の実態も明らかにされているので、両者の相互作用メカニズムについても研究が進むことが期待される。 茎粒形成(Cluster III)では、共生アイランドを持たないAgromonas oligotrophica S58株とその近縁株ゲノムの比較により、クサネムへのNod-factor非依存性の共生システムの解明に道を開いた成果となった。 サツマイモ窒素固定エンドファイト(Cluster II)のドラフトゲノム解析を完了し、近縁のBradyrhizobium属細菌ゲノムとのnif, fix, ndv, T3SS遺伝子などの詳細な比較解析を進め始めた。また、イネ根からS58株やORS278株に近縁でありながら、クサネムに根粒形成を起こさない菌株を得ており、Nod-factor非依存性の共生システム解明の鍵となるBradyrhizobium属細菌の取得も成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であるので、病原と共生の起源にも関わり、国際競争が激しいUSDA122株の共生不和合性を誘導するエフェクター遺伝子の同定を優先する。候補遺伝子破壊株および遺伝的相補株のタンパク質分泌解析およびRj2遺伝型ダイスに対する共生表現型解析を進める。さらに、根粒共生(Cluster I)、茎粒形成(Cluster III)、エンドファイト(Cluster II)のそれぞれの超近縁菌のゲノム比較の結果に基づき、植物共生レベルの高次化とゲノムの構成原理の全体像について作業仮説を最終年度に相応しく提示したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(14 results)