2011 Fiscal Year Research-status Report
プラズマローゲン含有口腔内細菌を駆使した認知症予防戦略
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23658066
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
神尾 好是 山形大学, 理工学研究科, 特任教授 (00109175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 淳 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30221188)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | プラズマローゲンリン脂質 / ヒト認知症予防 / Selenomonas sputigena / ヒト口腔内細菌 / γ-セクレターゼ / 酵母ミクロソーム画分 |
Research Abstract |
ヒト脳の神経細胞のアポトーシスの防御リン脂質プラズマローゲン(Plasmalogen; 以降PLと略す)が、本研究代表者によりヒト口腔内細菌Selenomonas sputigena に発見された。アルツハイマー型認知症の原因物質としてアミロイドβ(Aβ)タンパク質が重要である。Aβは細胞膜貫通型のアミロイド前駆体タンパク質(APP)が複数のセクレターゼにより分解されて生じるペプチドである。それらのうち、最終的に作用するのが膜酵素複合体であるγ-セクレターゼである。本年度は、γ-セクレターゼ構成タンパク質および基質となるAPPのC-末端側断片を発現させた酵母のミクロソーム膜画分を利用したγ-セクレターゼのin vitroアッセイ系を確立した。本系を駆使して、γ-セクレターゼが包埋されている酵母ミクロソーム画分の脂質を様々な生体膜構成リン脂質と置き換えることによるγ-セクレターゼの活性への影響を解析した。 その結果、フォスファチジールコリン(PC) のみで再構成した場合、Aβ産生量は酵母ミクロソーム時の約 2 倍に増加したことから、γ-セクレターゼ及び基質の包埋環境を変化させるとγ-セクレターゼ活性に影響することが明らかになった。さらに PC と PL型フォスファチジールエタノールアミン(PE) の混合脂質で再構成したところ、PE の割合が高くなるとγ-セクレターゼ活性が極めて強く抑制される事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、プラズマローゲンリン脂質は、ヒト脳の神経細胞のアポトーシスの防御リン脂質であることが、in vivoの実験により示唆されていたが、詳細は明らかにされていなかった。今回、アルツハイマー型認知症の原因物質としてのアミロイドβ(Aβ)タンパク質に注目した。Aβは細胞膜貫通型のアミロイド前駆体タンパク質(APP)が複数のセクレターゼにより分解されて生じるペプチドであるが、それらのうち、最終的に作用するのが膜酵素複合体であるγ-セクレターゼである。本年度は、酵母でγ-セクレターゼ構成タンパク質および基質となるAPPのC-末端側断片を発現させた酵母のミクロソーム膜画分を利用したγ-セクレターゼのin vitroアッセイ系を確立し、本系を駆使して、リン脂質によるγ-セクレターゼの活性抑制作用を直接in vitro で解析し、フォスファチジールコリン(PC)が γ-セクレターゼを高めることを突き止めた。それとは対照的にPL型フォスファチジールエタノールアミンは、γ-セクレターゼ活性を極めて強く抑制する事を初めて明らかにした。本研究成果は、2012年度日本農芸化学会大会(京都:2012年3月25日,4C09a05)で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
生物におけるプラズマローゲンリン脂質(PL)の生理的意義の解明:PLの生理的意義を研究代表者らにより全ゲノム塩基配列が決定されたS.ruminantiumとそのゲノム情報を駆使して分子レベルで解明し、本結果を基に人体におけるPLの存在意義を考察する。実験方法は以下の通りである。(1) 最初に、S.ruminantiumの酸素耐性はPL依存的であることを生菌を使用して予測する。S.ruminantiumを嫌気的に培養した後、空気(酸素)に曝露させ、経時的に菌体のPL含量を定量し生存率との相関を検証する。(2)次に、PLの生合成経路を次の2手法により明らかにする。・手法1: 長鎖脂肪アルデヒド転移酵素遺伝子の大腸菌へのクローニングから出発する。我々は、S. ruminantiumにおいて外部から与えたC16:0アルデヒドがPLに取り込まれることを明らかにしている。従って、大腸菌へのアルデヒト転移酵素遺伝子のクローニングは、メンブラン転写コロニーを放射能標識C16:0アルデヒドで保温し、放射能のリン脂質画分への取り込み活性で検証する。大腸菌においては、放射能標識C16:0アルデヒドは菌体内で遊離して存在することから、本脂肪アルデヒドは、コロニーのアセトンによる洗浄操作で取り除ける。Radioautographyにより放射性コロニーを選別する。クローン化された本遺伝子を決定する。・手法2:これまでにS.ruminantiumのゲノム塩基配列から推定されたorf中にPL合成系遺伝子群のいくつかについて有力候補を見出した。さらに精密解析を進め、生合成経路に関与する遺伝子群の中で特に長鎖脂肪アルデヒド転移酵素遺伝子を決定する。(3)最終的に、本菌における脂肪アルデヒド転移酵素遺伝子変異株を作成し、本変異株を用いて、(1)に記載した実験を行い、酸素耐性はPL依存的であることを証明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に以下の項目に研究費を使用する予定である。(1)遺伝子関係試薬(プラズマローゲンリン脂質合成に関与する長鎖脂肪アルデヒド転移酵素のクローニング)(25万円)(2)放射性試薬(放射性パルミチン酸)(20万円)(3)放射性パルミチン酸からのパルミトアルデヒドの有機合成試薬並びに一般試薬)(20万円)(4)Selenomonas ruminantium 並びに.S.sputigena嫌気培養用培地並びに培養用ガス(20万円)(5)ガラス・プラスチック器具(10万円)(6)研究発表国内旅費(研究代表者、分担者、大学院生2名、各2泊3日)(15万円) 以上
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