2011 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー代謝制御による酢酸菌酸化発酵機能の有効利用に関する研究
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23658070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新井 博之 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70291052)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 酢酸菌 / 酸化発酵 / 不完全酸化 / Acetobacter |
Research Abstract |
酢酸菌Acetobacter aceti NBRC14818について、炭素源の違い(グルコース、エタノール、酢酸、グルコース+エタノール)によるトランスクリプトーム変化をDNAマイクロアレイを用いて解析した。エタノール存在時にはTCAサイクル関連の遺伝子発現が低下し、さらにグルコースが存在すると、解糖系からのオーバーフローメタボリズムにより細胞内に酢酸が生成することで、グルコースとエタノールの共存下では、エタノールから細胞外に生成した酢酸の消費が押さえられることが示唆された。また、エタノール、および、酢酸の資化にはグリオキシル酸経路が重要であることが示された。 A. aceti NBRC14818と、食酢醸造株であるAcetobacter pasteurianus NBRC3283の比較ゲノムの結果、後者ではグリオキシル酸経路が欠損していたので、A. acetiのグリオキシル酸経路遺伝子破壊株、および、A. pasteurianusにグリオキシル酸経路遺伝子を導入した株を作成し、野生株と酢酸の蓄積性を比較した結果、グリオキシル酸経路の欠失は、エタノールから生産された酢酸の過酸化を遅らせ、食酢醸造に有利であることが示された。 A. aceti NBRC14818のゲノムには、好気呼吸において酸素を水に還元するキノール酸化酵素の遺伝子が4種類存在する。これらは酢酸生産に関与する膜結合型のエタノール酸化酵素系からの電子受容体であるため、エタノールの完全酸化と不完全酸化の制御に重要な役割を果たすと予想される。マイクロアレイの結果から、4種のキノール酸化酵素遺伝子の発現パターンに違いが見られ、生育条件に応じた使い分けがあることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A. aceti NBRC14818における炭素源の違いによるトランスクリプトーム解析、および、食酢醸造株A. pasteurianus NBRC3283との比較ゲノム解析から、TCAサイクル関連遺伝子の発現制御と、グリオキシル酸経路の有無が、エタノールの不完全酸化による酢酸の生産に重要であることを明らかにした。さらに、A. acetiの遺伝子操作系を確立し、グリオキシル酸経路を構成する遺伝子破壊株を作製し、その酢酸蓄積との関連性を示した。これらの結果から、酸化発酵における中央炭素代謝経路の重要性を示すことができ、本年度の目標をほぼ達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
食酢醸造株であるA. pasteurianusを用いたマイクロアレイにより、炭素源の違い、および、エタノール酸化過程の生育フェーズによるトランスクリプトーム変化を解析し、A. acetiとの比較から、エタノールの不完全酸化による酢酸を蓄積するメカニズムに関する知見を得る。4種の末端酸化酵素については、大腸菌等の呼吸酵素欠損株を宿主として異種発現を行い、各酵素の生化学的な特徴を解析し、酸化発酵に対する役割を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はA. pasteurianusのマイクロアレイ解析を行うため、そのアレイチップと解析用の試薬類、および、生化学、分子生物学実験の試薬、器具類等の消耗品に使用する。
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Research Products
(4 results)