2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23658071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸山 潤一 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (00431833)
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Keywords | 麹菌 / 有性世代 / 接合型 / 菌糸融合 / 菌核 |
Research Abstract |
麹菌Aspergillus oryzaeは、日本酒、醤油、味噌の製造など日本の伝統的醸造産業で長年にわたり使用されてきた糸状菌である。しかし、麹菌では有性世代が発見されておらず交配が不可能であり、優良な形質をもつ菌株の育種が困難である。本研究では、麹菌の有性世代を初めて発見することを目的とした。我々はこれまでに、麹菌においてMAT1-1型とMAT1-2型の2つの接合型株が存在することを明らかにし、ヘテロタリック(雌雄異型)な有性生殖が行われる可能性を示した。 昨年度は、異なる栄養要求性および蛍光色で可視化した株を用いることで、麹菌が菌糸融合能をもつことを明らかにした。本年度は、異なる接合型株を対峙培養することにより、その境界線上で有性生殖が行われるかを検討した。 菌核は菌糸が接着・融合を繰り返して形成する耐久構造であり、他の糸状菌で菌核内に有性胞子が形成されることが報告されている。麹菌では菌核形成能力が低下していることから、有性生殖を行うにはその形成能力を向上させることが必要である。そこで、菌核形成を正に制御する転写因子SclRの過剰発現、または菌核形成を負に制御する転写因子EcdRの欠損により、麹菌の有性生殖を促進することを試みた。 作製した株を用いて対峙培養を行ったところ、コロニーの境界線に菌核の形成が見られた。得られた菌核は栄養要求性および蛍光色から、菌糸融合体により形成されたものであることを確認した。さらに、SclR過剰発現およびEcdR欠損によってコロニーの境界線の菌核形成が促進されることを明らかにした。さらに、菌核を成熟させてその内部を観察した結果、有性胞子様の構造がみとめられた。今後、この構造について栄養要求性や蛍光色の組み合わせから交配の有無を調べることにより、麹菌における有性世代の発見につながることが期待される。
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Research Products
(17 results)