2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23658076
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
日比 慎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30432347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 晃規 京都大学, 生理化学研究ユニット, 助教 (10537765)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 色素増感太陽電池 / 微生物酵素 / 有機ルテニウム錯体 / 微生物スクリーニング / 酵素触媒 |
Research Abstract |
色素増感太陽電池(DSC: dye sensitized solar cell)は、高効率さと低製造コストを併せ持つ次世代の太陽電池である。現在DSCの光‐電気変換効率は最大で約11%であり、約20%の効率を持つシリコン系の太陽電池と比較すると低いため、今後の大幅な改善が必要となっている。DSCにおいて高い電力変換効率を得るための重要な要素の1つは色素であり、近年効率を向上させる様々なタイプの新たな色素が開発されている。DSCに最も良く使われている基本的な色素はルテニウム有機金属錯体系色素である。近年の研究ではこの色素をベースに改良を加えた構造類縁体が効率の向上に良好な結果を示している。本研究では微生物酵素の持つ多彩な触媒作用により、ルテニウム色素RuL2(NCS)2の分子構造の一部を修飾・置換することでその機能性の向上を目指す。 本年度はルテニウム色素変換微生物のスクリーニングを実施した。環境中より採取した土壌の懸濁液を汎用的なルテニウム色素であるN3色素とBlack Dye色素を単一炭素源とする培地に接種し、継代培養を繰り返す事でルテニウム色素資化性菌の集積化した。これまでにN3色素資化性菌としてバクテリア97株・糸状菌12株、そしてBlack Dye色素資化性菌としてバクテリア104株・糸状菌18株を単離している。これらの土壌分離菌はルテニウム色素変換反応に順次供している。まず反応液中の色素の紫外可視吸収スペクトルを測定することで、吸収波長や吸光度の変化を観測した。さらに反応産物は薄層クロマトグラフィー(TLC)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた分離分析に供する事で、ルテニウム色素の酵素変換反応産物の有無を検出している。現在すでにBlack Dye色素の紫外可視吸収スペクトルを変化させる菌株を1株取得しており、より詳細な解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主にルテニウム色素変換微生物のスクリーニングを実施した。ルテニウム色素としてN3色素、Black Dye色素という最もDSC用途に使用されている2種類の色素を選択してその高機能化を目指した。当初目論んだ通り、ルテニウム色素を単一炭素源として生育できる資化性菌を多数得ることに成功している。そしてこの内1株においてBlack Dye色素の紫外可視吸収スペクトルを変化させる活性を見出しており、微生物によるルテニウム色素の酵素変換が起こることが期待できる結果となった。以上のように本研究の目的として挙げたルテニウム色素の微生物変換に関して、計画の根幹をなす微生物類の取得に関して概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もルテニウム色素変換微生物のスクリーニングを継続し、より多種多様な微生物類の取得に努める。土壌分離菌はルテニウム色素変換反応に供していき、色素変換活性を保持する微生物を選別していく。何らかの変換反応産物の生成が確認できたサンプルに関してDSCの光‐電気変換効率を測定していく。色素混合物を含む反応液はDSCの負極に焼き付け、構造が単純で安価であるDSC装置に容易に組み込むことができる。この装置に光を照射することで発生する電力を太陽電池I-V特性計測装置で測定することで効率の向上したサンプルをスクリーニングしていく。 さらに微生物スクリーニングにより取得した、DSCの高効率化に有用なルテニウム色素の酵素変換反応産物の構造決定を行う。まず変換活性のあった微生物を大量培養し、変換反応のスケールアップを行う。次いでHPLCやカラムクロマトグラフィーを用いてサンプル溶液より変換反応産物の分取精製を行う。精製した色素は質量分析計や核磁気共鳴(NMR)を用いてその構造を解析していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は微生物集積培養のための培養用試薬、酵素反応産物の分析用試薬、DSC装置用の部品等の購入費に充てる。また反応産物の分取精製のため分取HPLC用送液ユニットおよび微生物菌体から酵素を精製するための試薬を購入する。 また国内・海外学会への参加を積極的に行い情報収集に努めるための旅費や参加費に充てる。
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