2011 Fiscal Year Research-status Report
新手法によるAzospirillum属細菌の網羅的分離と分類
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23658080
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
谷 明生 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (00335621)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / Azospirillum属細菌 / 根圏 / 窒素固定 |
Research Abstract |
本研究の目的は、Azospirillum属細菌を広く植物を含む自然界から分離し、新種菌を同定し新種提唱を行うこと、さらにその由来となる植物と分離される菌との特異性を調べ、植物への接種効果を確認することである。本属細菌は多くの植物の根圏に存在し、その高い窒素固定能や植物ホルモン合成能により植物の生育を促進する報告が多くある。しかし16SrRNA遺伝子の系統樹では別の属と入れ子になるなど、その分類体系は混乱しており、また植物種との相互作用特異性についてもよく分かっていない。そこで本研究では、申請者が近年確立した、MALDI型の質量分析器を用いて菌体総タンパク質のスペクトルを比較することにより種レベルで迅速に同定可能な方法を用いて、本属細菌を網羅的に分類する。当該年度は多くの植物サンプルの根圏からNfB培地(窒素を含まない軟寒天培地)で生育する菌体を収集し、さらにRc培地(同様に窒素を含まず、Congo Redを含む寒天培地)でコロニーを精製した。本属細菌はCongo Redの存在下、赤色を呈する。手始めに色にかかわらず約150株を分離した。質量分析スペクトルを取り、本属細菌の基準株と比べ、質量分析スペクトル系統樹での各クラスターの代表株の16S rRNA遺伝子を解読したが、本属細菌に属する株は得られなかった。窒素固定には微好気条件が良いのではないかと考え、デシケーター内でろうそくを燃やし、微好気にした条件で、さらにイネ科の植物に絞って再度100株の赤色のコロニーを分離し、質量分析した結果、約70株の本属細菌を得ることが出来た。各クラスタの33株の16S rRNA遺伝子の解読の結果、A. oryzae, A. lipoferum, A. brasilenseと高い相同性を持つ株と、新種と考えられる(16SrRNA遺伝子の相同性が98.6%以下である)11株を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に述べたように、当初単純に赤色のコロニーを分離すれば良いと考えていたが、微好気条件に気づくのに時間がかかったため、本属細菌以外の細菌の16SrRNA遺伝子を解読する時間を要した。それでも、質量分析スペクトルに基づくクラスター解析により解析する株の数が大幅に減ったため、浪費する時間は最小限となったと考えられる。微好気条件にしてからは高い頻度で赤色のコロニーは本属細菌であり、他には予想通りRhizobium属細菌が得られた。分離株の多くは基準株と異なる質量分析クラスターを示したので、基準株とは遺伝学的に異なっている種であると考えられる。これまでに、別の属で質量分析クラスターが異なると種が異なることを明らかにしている。 今回はイネ科の植物に限って分離を行ったが、分離法が確立できたため、植物種の範囲を広げて同じ方法で培養し、スクリーニングの規模をもう少し大きくしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られた本属細菌のうち、基準株から系統的に遠いものから、生化学的性状やBIOLOG試験を行い、基準株と異なることを明らかにし、新種提唱を行う論文として発表する。また培養法の確立が出来たため、イネ科以外の植物からの分離も試みる。最終的には植物種との相互作用特異性を明らかにするため、イネ科以外の植物についても検討の余地がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者は若手(A)の研究費もいただいており、その研究費で海外研修をすることになった。2012年5月から2013年1月までスイスETHで若手(A)研究費に関連する研究を行うため、基金化されている本萌芽研究は約1年間延期する。そのため研究費の使用計画はないが、5月8日現在ですでにドイツの微生物保存機関DSMZから何株かの本属細菌の取り寄せなどに用いている。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Practical application of methanol-mediated mutualistic symbiosis between Methylobacterium species and a roof greening moss, Racomitrium japonicum.2012
Author(s)
Tani, A., Takai, Y., Suzukawa, I., Akita, M., Murase, H., & Kimbara, K.
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: 7
Pages: e0033800
DOI
Peer Reviewed
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