2013 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物培養細胞の常温ガラス化による長期保存法の開発
Project/Area Number |
23658086
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
菅原 康剛 埼玉大学, 理工学研究科, 名誉教授 (70114212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗山 昭 東京電機大学, 理工学部, 教授 (00318156)
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Keywords | 植物 / 培養細胞 / 保存 / ガラス化 / バイオテクノロジー / エンドサイトシス |
Research Abstract |
植物の培養細胞を常温でガラス化させるためには、細胞の生きた状態での含水量を充分に低下させる必要がある。そのためには細胞内がガラス化しやすくすることと細胞の乾燥耐性を高めることが必要であり、現在まで種々の植物の培養細胞について、乾燥耐性を高める培養条件について調べてきた。その結果、高濃度の糖を含む培地での前培養が効果的であり、調べた高等植物の培養細胞のうち柑橘類の培養細胞が、現在のところこの前培養によって最も高い乾燥耐性を示し、ガラス化し易いことが確かめられた。高濃度のショ糖を含む培地での前培養によって、細胞内には多量の糖が蓄積するが、この糖が細胞内のガラス化と乾燥による障害を防いでいることが知られている。現在まで、前培養をした細胞の乾燥後の生存率を高める前培養中の処理(高温、Ca処理等)を調べてきたが、さらに糖の取り込み量の差が乾燥耐性の増大の差となる可能性があり、柑橘類培養細胞での高い乾燥耐性はこの糖の取り込みの差に由来する可能性を明らかにする必要がある。植物細胞での糖の取り込みは2つのシステム(膜における輸送系とエンドサイトシス)によるとされている。そこで、本研究では先ず後者(エンドサイトシス)の阻害剤として知られているWortmanninとLY294002の柑橘類培養細胞の乾燥耐性の増大におよぼす効果について調べた。その結果、いずれの阻害剤においても前培養の過程でこれらの阻害剤を培地に加えることによって、乾燥耐性の増大を抑えることが明らかになった。柑橘類培養細胞では、前培養の培地に添加する糖として、ショ糖以外ではブドウ糖が効果的であり、トレハロースも比較的効果があることが認められ、エンドサイトシスによる細胞への糖の取り込みが細胞のガラス化と乾燥耐性の増大に重要である可能性が示唆された。今後、これらに関連してさらに詳しく解析する必要がある。
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