2013 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子の細胞核内配置制御機構とその組換えタンパク質高効率産生細胞構築への応用
Project/Area Number |
23658091
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
奥村 克純 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30177183)
|
Keywords | 遺伝子発現 / 核内配置 / エピジェネティクス / 動物細胞 / DNA損傷 |
Research Abstract |
動物細胞によるタンパク生産効率高揚の本研究の着目点は,導入遺伝子をユークロマチン領域に配置させ,転写が盛んな領域に遺伝子を組込むことである。転写不活性なヘテロクロマチン領域をユークロマチン化することで遺伝子発現が爆発的に上昇することをセントロメア周辺ヘテロクロマチン領域について見出し,核全体のユークロマチン化を達成できれば高価で複雑な遺伝子配置制御系を用いなくても高発現細胞を容易に取得できると考えた。一方,ゲノム領域のヘテロクロマチン化にはDNAの高メチル化が鍵であり,逆にエピジェネティック制御で低メチル化状態にできれば通常の遺伝子導入法でも遺伝子発現効率の高い細胞の効率的取得が期待できる。まず,細胞をアザシチジン(5azadC)処理するとヘテロクロマチン領域のユークロマチン化が起こることを各種細胞で確認した。ヘテロクロマチンのユークロマチン化は5azadC処理後二回のS期を経てエピジェネティック修飾がユークロマチン型に変化して起こり,転写活性化されるゲノム領域にはヒストンH3.3が先立って集積することを見出している。一方で,低メチル化処理後二回のS期を経てDNAが損傷することを見出した。これはDNAメチル化維持酵素のノックダウンでも同様であり,DNA低メチル化がDNA損傷の原因であるという重要な知見を確認した。遺伝子発現の配置制御による転写効率の高揚という本研究の主課題に加えてエピジェネティック制御異常によるDNA損傷の誘導という課題はメチル化基質の供給不足がDNA損傷を誘導するという概念を導くため,本研究の副次的成果としてこの機構についても研究を進めた。その結果,DNA低メチル化処理後1回目のS期で生じたヘミメチル化DNAを認識するタンパク質UHRF1が結合したままゲノムから解離できないことが損傷の原因であること,また葉酸欠乏でもDNA損傷が誘導されることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子発現の配置制御による転写効率の高揚という本研究の主課題については十分に進んでいるとは言えないが,ヘテロクロマチン領域のエピジェネティック制御によるユークロマチン化や転写活性化を確認しており,これらに加えてエピジェネティック制御異常によるDNA損傷の誘導という現象を見出しており,メチル化基質の供給不足がDNA損傷を誘導するという概念を発展的に導くため,本研究の重要な成果として加え,期間を延長してこの部分について重点的に研究を推進することで新たな成果として達成度を上げたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現の配置制御による転写効率の高揚という本研究の主課題については十分に進んでいるとは言えないため研究期間を延長したが,エピジェネティック制御異常によるDNA損傷の誘導という現象を見出しており,メチル化基質の供給不足がDNA損傷を誘導するという概念を発展的に導くため,このメカニズムの解明や,栄養因子供給不足によるエピジェネティック制御について本研究の重要な課題として研究を推進する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の成果として,DNAの低メチル化時のDNA損傷誘導機構の解明が含まれるが,ChIP-seq法等に使う抗体が効率よく使えず,その条件設定に予定外の期間を要している。しかし,本年度中に解決できる見通しがたったため,ChIP-Seq法の実施とそれを含めた成果の発表,論文作成を次年度に行う必要が生じてしまった。 分子生物学用薬品代等消耗品費として441,362円,国内外成果発表旅費として10万円,論文校閲料として5万円,論文別刷り代として5万円。
|
Research Products
(3 results)