2012 Fiscal Year Annual Research Report
永続投与のいらない「夢の21世紀型免疫抑制剤」創製への挑戦
Project/Area Number |
23658093
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河本 正次 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (90294537)
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Keywords | 拒絶反応 / 免疫抑制抗体 |
Research Abstract |
臓器移植において免疫抑制剤の投与は必須であるが、現行薬剤には永続投与の必要性と副作用の問題がある。研究代表者はラット肝移植モデルに見られる免疫抑制剤なしに臓器が自然生着する現象の分子基盤を解明し、術後の同ラット血中に新規の免疫抑制抗体が誘導されていることを発見した。本研究では、この生体に備わっている拒絶反応回避の仕組みに学び、これを次世代型免疫抑制剤の創製へとつなげるべく、同免疫抑制抗体の薬理作用機序解明ならびに創薬応用展開に資する知見を得ることを目的としている。 昨年度は、免疫抑制抗体(anti-H1 抗体)の薬理作用を規定する標的細胞の同定に成功し、本抗体がconventional T細胞(Tcon)に作用すること、また、本抗体がその作用濃度に応じて制御性T細胞(Treg)依存性ならびに非依存性の二相性のメカニズムを介して免疫抑制作用を発揮していることをつきとめた。本年度ではこのうちTreg依存性の免疫抑制シグナル伝達経路につき更に詳細な作用機序の解明を試みた。その結果、anti-H1抗体はTconを介してTregの免疫抑制機能を増強させていること、その際にTregの細胞数増加は認められないこと、また、当該Tregの機能亢進発揮には本抗体によるTconへの共刺激に加えてT細胞抗原受容体架橋シグナルも必要であることが判明した。更に、anti-H1 抗体の臨床展開への一環として肝移植患者における本抗体価の動態追跡を行ったところ、ラットの自然生着肝移植モデルにおいて見られる本抗体の誘導様式と同様の表現型を示す症例が認められた。また、術後長期を経過した患者においては本抗体価が有意に上昇している症例、あるいは逆に術前より抗体価が低下している症例、の2つのパターンに大別できることが明らかとなった。
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